ひょうたん補完計画 Part4


 ひょうたん補完計画







Part4: 1978年4月〜 1978年8月


掲載号ストーリー

冒険王78年4月号表紙
 78年4月号
78年4月号扉絵
78年4月号扉絵

地区大会決勝戦を制し、東京での全国大会に駒を進める事になった武蔵中野球部。翌日のグラウンドでは念願のピッチャーでの登板に得意になった佐久間が、自慢げに自らの活躍を語っていた。相変わらずの佐久間の性格にげんなりするナイン達。と、そこへ転校した西川(ハム)が姿を現す。

78年4月号・諸君らにも見てもらいたかった ハムの幻覚まで見るようになった…
諸君らにも見てもらいたかった / ハムの幻覚まで見るようになった…

久しぶりの再会に大喜びの兵太達。野球部の部室に通されたハムはノートとアルバムを取り出した。それは彼が調べた東京代表二校と神奈川、千葉、埼玉、茨城、栃木、群馬各出場校の資料と写真だった。その資料を武蔵中に役立てて欲しいというハム。遅れて部室に入ってきた野々宮(キャプテン)、浜本(ハンサム)との再会に肩をたたき合い喜ぶハムだったが、兵太はそのハムの手があまりにも綺麗なのに違和感を感じる。その手は野球を続けている者の手ではなかったのだ…

そんな兵太の思いをよそに、話題はハムの持参した写真に移る。東京代表の192㎝と189㎝の中学生離れした大型バッテリー、千葉県代表の左右両手投げの投手。全国大会での対戦相手達の情報に目を輝かせるナイン達。

78年4月号・ハムの持参した資料… なんてきれいな手をしているんだ…
ハムの持参した資料… / なんてきれいな手をしているんだ…

と、そこへ校長先生がやってきた。だが一緒にやって来たのはなぜか佐久間の祖父だった。ハムがいるのに気付いた校長先生はハムの近況を尋ねると、田宮先生に後で話があるようなそぶりで佐久間の祖父と共に部室を出て行った。

78年4月号・母校はいつまでも武蔵中なんだ… 佐久間君のおじいさんだ…
母校はいつまでも武蔵中なんだ… / 佐久間君のおじいさんだ…

練習に戻ろうとグラウンドにやって来たナイン達。だが、グラウンドでは何と東郷先生が佐久間にピッチングのコーチをしていた。 東郷先生に挨拶するハムだったが、なぜか素っ気ない態度の東郷先生。ノックを受けたいというハムの申し出も拒絶すると、練習を続けようとする。

その様子にたまりかねた兵太が「せっかく東京から資料を持ってきたくれたのに」と、取りなそうとすると、「資料があるから勝てるというわけじゃない」と取り付く島もない返答。

78年4月号・資料があるから勝てるというわけじゃない
資料があるから勝てるというわけじゃない

更に東郷先生はハムに向かって「今は市立二中の野球部員で武蔵中野球部とは関係ない、資料は自分たちの部のために活かすのが当然、敵情視察のつもりか」と容赦のない言葉を浴びせる。

東郷先生の辛らつな言葉にショックを受けるハム。あまりの言い方に兵太も「この学校をやめたらもう赤の他人ですか!」と怒りをあらわにするが、東郷先生はそんな兵太の怒りを意にも介さないように「左手のケガをいいことにサボるな、ランニングでもしろ!」とまるで受け付けない。

78年4月号・この学校をやめたらもう赤の他人ですか!
この学校をやめたらもう赤の他人ですか!

東郷先生の冷淡な態度にどうにも腹の虫が収まらない兵太はハムと共に渋々ランニングを始めるが、東郷先生の厳しい態度が身に染みたハムは、兵太の後について走りながら「ぼくは来てはいけなかったんだ…」と自らの行動を悔恨の想いで噛み締めていた…

78年4月号・ぼくは来てはいけなかったんだ…
ぼくは来てはいけなかったんだ…

夕方、兵太の練習上がりを待ちながら、ハムは兵太の末の弟、クリオ(ドングリ)と学校近くの河原で遊んでやっていたが、やがて遊び疲れて眠ってしまったドングリを負ぶいながら兵太の家へ送ってやる。兵太はまだ練習から戻っていなかったが、あざみやすみれにうながされ、ハムは兵太の帰りを待つことにする。

手のケガもあり、早めに練習を切り上げて家に帰ってきた兵太。と、家の前に佐久二中の茅野が座り込んでいた。茅野は兵太に「武蔵中はデータがあれば勝てるらしいけど、俺たちはオタクらに負けちまった。データがあったにもかかわらず…」と、何やら書類の入った大きな封筒を投げてよこした。茅野はその封筒をハムに渡してくれという。

78年4月号・西川さんに渡してよ
西川さんに渡してよ

ハムと夕食を共にしている兵太。ハムは兵太が茅野から渡された封筒の中身を見ていたが、それは全国大会優勝候補、大阪代表尼崎中学の2年生エース、八尾の資料だった。これは自分宛ではなく武蔵中によこした資料だというハム。武蔵中に役立てて欲しいという茅野の気持ちがうれしくてハムは思わず涙ぐんだ…

78年4月号・阪の風雲児、八尾…
阪の風雲児、八尾…

今晩東京へ戻るというハムと共に、兵太は駅へ急いでいた。「学校が変わってもいつまでも友達でいてくれるんだろう」と尋ねるハムに「当たり前だ、お前も俺もいつだって武蔵中ナインだ」と応える兵太。駅に着き、慌ただしく午後7時発東京行きの急行電車に乗り込むハムに「手にマメを作るなよ、素振りもほどほどにな!」と声をかける兵太。その言葉に、実は自分が野球をやめていた事を兵太は知っていたのだと気付くハム。

78年4月号・いつだって武蔵中ナインだ 素振りもほどほどにな!
いつだって武蔵中ナインだ / 素振りもほどほどにな!

走り出した急行電車をホームで見送りながら、兵太はホームの端で、ハムが本当はみんなに会いたくて我慢できずにやって来たのだと、ハムの気持ちを思って涙を流すのだった…

78年4月号・我慢できずにやって来たんだ… 思いやりこそ唯一の生活の規範である…
我慢できずにやって来たんだ… / 思いやりこそ唯一の生活の規範である…


冒険王78年5月号別表紙
 78年5月号
78年5月号扉絵
78年5月号扉絵

遂に全国大会出場のため、東京にやって来た武蔵中ナイン。バスの車窓から見える神宮球場の偉容に、ナイン達はそれぞれの想いで羨望のまなざしを注ぐ。

神宮球場だ! 一回戦だけで帰るなんていやです!
神宮球場だ! / 一回戦だけで帰るなんていやです!

バスは絵画館を過ぎ、宿舎のホテルへと向かうが、その途中一同はグラウンドで全国大会に出場する尼崎中、八尾のピッチング練習に出くわす。兵太は思わずバスを止めさせると、八尾のピッチングを食い入るように見つめる。そのすさまじい剛速球に、兵太の闘志はいやが上にも燃え上がるのだった。

八尾のピッチング! おれの体が燃えてくる…
八尾のピッチング! / おれの体が燃えてくる…

バスは一同の宿舎である東京ニューグランドホテルに到着する。想像以上に大きなホテルに驚く一同。有頂天になり、ホテルのロビーではしゃぐ長池(一寸法師)は、ロビーにいた男達に注意される。一見高校生とも思えた長身の男達は、実は全国大会に出場する北都中の上條投手と岩永捕手であり、彼らは先日西川(ハム)の言っていた話題の長身バッテリーだった。

うわぁ、でっかいホテル! 貸切じゃないんだから静かにして下さい
うわぁ、でっかいホテル! / 貸切じゃないんだから静かにして下さい

チェックインを終え、部屋へ入ろうとする兵太は、ロビーに戻ってくる尼崎中ナインの姿を見る。その土まみれのユニフォームを見て、兵太は他のチームが既に練習に入っているのを知り、かすかな焦りを感じる。

八尾だ… 俺達がビリッケツで上京なのか…
八尾だ… / 俺達がビリッケツで上京なのか…

部屋に入った兵太。同室は一寸法師だ。と、そこへ野々宮(キャプテン)と浜本(ハンサム)がやって来た。キャプテンの話によると、どうやらこのホテルを世話したのは佐久間の祖父らしいとの事だった。先日、佐久間の祖父が学校に来ていたのはこのためだったのだ。

キャプテンにうながされ、部屋の内線電話からフロントに外線発信を依頼する兵太。兵太達は東京に戻っているハムに連絡を取ることにしていたのだ。だが、フロントからの回答は、伝えた番号がもう使われていないという意外なものだった。思わず確認を依頼する兵太。だが、再度の確認も、帰ってきた回答はやはり使われていないと言うものだった。「ハムさんまた引っ越ししたの?」という一寸法師の何気ない一言に、なんとも言えぬ胸のざわめきを覚える一同。

東京に着いて、何か一つ忘れてないか? ハムの家の電話が使われていない?…
東京に着いて、何か一つ忘れてないか? / ハムの家の電話が使われていない?…

同じ頃、やはりハムと連絡を取ろうとしていた田宮先生も、ハムの家の電話番号が使われておらず、困惑を覚えていた…翌日、いよいよ東京での練習を始める武蔵中ナイン。ライナーとホームランを連発する兵太、落差のあるフォークを投げ込むハンサムのピッチングに他校の選手達も熱い視線を注ぐ。

ハムの家と連絡が取れない… 注目を集める武蔵中の練習
ハムの家と連絡が取れない… / 注目を集める武蔵中の練習

練習を終え、宿舎のホテルに戻ってきた兵太は、フロントの電話を見て、連絡の取れないハムの事が気になった。その様子を見ていた東郷先生に、兵太はハムと連絡が取れないことを話すが、そんな兵太達の様子に、東郷先生は今は野球以外の事は一切考えるなと喝を入れる。

ハムが気になって仕方がない兵太 今は野球以外の事は一切考えるな
ハムが気になって仕方がない兵太/ 今は野球以外の事は一切考えるな

部屋に引き上げた東郷先生だったが、誰かに電話をかけると、密かにハムの家族の消息を調べてくれるよう依頼するのだった…

78年5月号・余計な心配をかけおって…
余計な心配をかけおって…

次の日の夕方、ホテルのロビーにトーナメント表が貼り出される。思わず駆け寄る尼崎中の八尾。何と尼崎中の一回戦の相手は兵太達武蔵中だった。血祭りにあげてやると息巻く八尾の前に、武蔵中ナインもやって来た。トーナメント表を前に対峙する八尾と兵太。不敵な笑みを浮かべて兵太達を見下ろす八尾に、兵太もまた、激しい闘志を燃え上がらせていた…

血祭りにあげたるで!! 上等じゃないか、望むところだ!!
血祭りにあげたるで!!/ 上等じゃないか、望むところだ!!


冒険王78年6月号表紙
 78年6月号
78年6月号扉絵
78年6月号扉絵

遂に明治神宮野球場で開会の時を迎えた中学野球選手権大会。北都中、上條選手の選手宣誓で始まった大会は、開会式に続いて尼崎中対武蔵中の第一試合が行われた。初回の守備についた尼崎中は先発の八尾が気迫のこもった投球練習で、勝利への執念をみなぎらせる。

対抗意識みなぎる開会式! 強打武蔵中を見せてやれ!
対抗意識みなぎる開会式! / 強打武蔵中を見せてやれ!

八尾、気合いの投球練習! 尼崎中ナイン
八尾、気合いの投球練習! / 尼崎中ナイン

武蔵中は一番、長池(一寸法師)が打席に入るが、マウンドの八尾は早くも毒舌で一寸法師を牽制する。初球から得意のシュートで一寸法師をのけぞらせようとインコースを攻めた八尾だったがわずかにコースが逸れ、何と初球デッドボール!打席にうずくまり苦しむ一寸法師を見ながらも悪びれた様子のない八尾に、怒りを露わにする神戸(クチナシ)。ようやく立ち上がり一塁に向かう一寸法師は、いきなりボールをぶつけられた悔しさに怒り心頭、八尾から二塁を盗塁で奪う決意をする。

必殺シュートでのけぞらせてやる! 一寸法師、デッドボール!
必殺シュートでのけぞらせてやる! / 一寸法師、デッドボール!

続く二番諸星(ピーマン)はヒットエンドランを狙う。一寸法師はいきなり盗塁を決めようと二塁へ猛然とダッシュするが、ピーマンの打球はファーストのファインプレーに阻まれ、一寸法師は二塁フォースアウト、ピーマンもヘッドスライディングで一塁に飛び込んだもののアウトになってしまいダブルプレー。武蔵中のヒットエンドランをまんまと阻止した八尾は、その様子に勝ち誇ったように高笑いする。

闘志むき出しの一寸法師だが… ざっとこんなもんよ
闘志むき出しの一寸法師だが… / ざっとこんなもんよ

続く野々宮(キャプテン)も八尾の剛速球でツーストライクと追い込まれると、続くボール気味のスライダーに惑わされて空振り。武蔵中は初回の攻撃を三者凡退で終了した。守備につく武蔵中ナイン。デッドボールを受けた一寸法師を気遣う兵太は、八尾の傲慢な態度に怒りを募らせる。

許せない、あの傲慢な態度は 俺たちも紹介されたよ!
許せない、あの傲慢な態度は / 俺たちも紹介されたよ!

対する武蔵中は、浜本(ハンサム)の先発。八尾に負けじと力投するハンサムは一番土田をキャッチャーフライ、二番戸山をサードゴロに仕留めてツーアウト。三番、八尾を打席に迎える。ハンサムは初球からフォークボールで八尾を空振りさせると、二球目もフォークを連投。だが八尾はハンサムのフォークを右中間へ思い切り叩き返し、何とホームラン、初回に1点を先制する。ハンサムは続く四番阿部をファースト佐久間の好プレーでファーストライナーに仕留めたものの、武蔵中は早くも1点を追う展開で2回表の攻撃。ここで武蔵中は兵太が打席に立つ。

打つ方はどやねん? でゃああああっ!
打つ方はどやねん? / でゃああああっ!

尼崎中1点先制!
尼崎中1点先制!

すぐれたピッチャーにかかれば8割打者も2割程度に落ち込むものだとつぶやく八尾、強気の八尾はど真ん中のストレートと外角一杯のスライダーでたちまち兵太をツーストライクに追い込む。次に八尾が投げるのはインコースに食い込む八尾得意のシュートボールだと予感する兵太。だが、兵太の脳裏には開明中、住吉から受けた左手へのデッドボールの記憶が浮かんでいた…

いくでぇ8割打者! 追い込まれた兵太!
いくでぇ8割打者! / 追い込まれた兵太!

頭をかすめるデッドボールの記憶…
頭をかすめるデッドボールの記憶…


冒険王78年7月号表紙
 78年7月号
78年7月号扉絵
78年7月号扉絵

尼崎中、八尾との対決で早くもツーストライクと追い込まれた兵太。内角に食い込むシュートボールを予感した兵太だったが、八尾の球は高めのコース。きわどいコースにボールを見送った兵太は思わず主審の反応を見る。

兵太、見逃しか!?
兵太、見逃しか!?

主審も一瞬判断に迷った様子だったがその判定はボール。その兵太の様子に、八尾は「よく見たというより手が出なかったと言うべきだ」と兵太を挑発する。そんな八尾の指摘は実は兵太にとっては正鵠を射たものだった。ベンチの田宮先生も、その兵太の様子に開明中戦でのデッドボールの精神的な後遺症を心配する。

手がでぇへんかったというべきや!
手がでぇへんかったというべきや!

兵太への次の一球を巡ってサインのやり取りが続く尼崎中バッテリー。もう一度内角で勝負しようとする八尾に対し、兵太の打者としての能力を警戒するキャッチャー岡部は外角へのスライダーを要求する。二度同じコースへの投球は危険だといつになく強硬な岡部の主張に、八尾も渋々スライダーを投げるが、外角にヤマを張っていた兵太は八尾の球をライトへ流し打ちのホームラン。試合を1対1の振り出しに戻す。

もし内角を攻められていたら内野ゴロだったかも知れないと安堵する兵太の背に、自分との勝負を逃げたと罵声を浴びせる八尾。その八尾の様子に「ホームランされて頭に血がのぼったのさ 」と嘲笑気味の神戸(クチナシ)。尼崎中の監督も興奮する八尾の様子に不安を覚える。

兵太、同点ホームラン! 逃げたな日高!
兵太、同点ホームラン! / 逃げたな日高!

試合が再開されたにもかかわらず、スパイクのひもが緩んだと投球を始めない八尾を主審が注意するが、今度はベンチからの伝令を理由に再度タイムを要求する八尾。だが、何と伝令はは八尾にピッチャー交代を伝えたのだ。

八尾の様子に不安を覚えた監督はショート寺内と八尾を交代させ、八尾の頭を冷やさせようとしたのだ。過去何度も八尾のリリーフを務めてきた寺内のピッチングはアンダースロー。スピードはないもののコントロールには定評があった。兵太はその寺内のアンダースローに佐久二中茅野のピッチングを思い出していた。

ピッチャー交代! 佐久二中の茅野を思い出すな…
ピッチャー交代! / 佐久二中の茅野を思い出すな…

五番、三好(ニキビ)の初球打ちはキャッチャーフライ。続く六番神戸(クチナシ)も寺内の球を打ち上げてしまい、ピッチャーフライになるかと思われたものの、なんとショートに入っていた八尾がピッチャーの横まで出てきて捕球、ショートフライとした。更に七番木下(ミミ)もセカンドゴロに倒れてスリーアウト。尼崎中はようやく長い守備を終えベンチに引き上げる。

ベンチに戻った八尾に「お前一人のために尼崎中のイメージが悪くなった」と小言を言う監督。その監督の言葉に八尾はイメージばかりを気にする監督に勝利への執着を感じられず、いらだちを募らせる。

先生ぐらいの顔を持たにゃ… イメージが悪うなった…
先生ぐらいの顔を持たにゃ… / イメージが悪うなった…

試合は尼崎中寺内、武蔵中ハンサムともにマイペースな投球で膠着状態。武蔵中打線も打者のタイミングを外す寺内のピッチングに翻弄され、四回表の攻撃も諸星(ピーマン)、野々宮(キャプテン)が倒れてツーアウト、兵太の打順となる。

打席に入った兵太を再び大声で挑発する八尾、そんな八尾の挑発に乗るまいとする兵太に、長池(一寸法師)は「日高さん、大人になっちゃったのかなぁ…」と寂しそうだ。兵太の打球はジャンプするショート八尾の頭上を越えるレフトフェンス直撃の弾丸ライナー!だが強すぎた当たりが災いし、打球は内野へ跳ね返ってしまう。

膠着する試合… 日高さん、大人になっちゃったのかなぁ…
膠着する試合… / 日高さん、大人になっちゃったのかなぁ…

一旦二塁へ行きかけた兵太はこの様子に慌てて一塁へヘッドスライディングで戻るが、ボールを手にした八尾はあえて一塁へ送球せず、二塁でのクロスプレーを避けた兵太を臆病者呼ばわりする。尼崎中の監督も八尾の様子に「一人で野球をやっているつもりか」とあきれ顔。だが、ここまで我慢していた兵太も八尾の暴言に遂に堪忍袋の緒が切れ、「一対一の真剣勝負をしてるんじゃない!」と八尾の挑発に応酬してしまう。

八尾の挑発にすっかり頭に血がのぼった兵太は二塁への盗塁を宣言、寺内が投球モーションに入るや否や二塁へ猛然とダッシュ、バッターボックスのニキビが空振りすると強肩のキャッチャー岡部がすかさずショート八尾へ返球!二塁上でのきわどいクロスプレーに持ち込む。

一対一の真剣勝負をしてるんじゃねぇんだ! いくぜ、おら〜!
一対一の真剣勝負をしてるんじゃねぇんだ! / いくぜ、おら〜!

だが、その瞬間、二塁上で兵太と八尾は激しく激突!吹っ飛んだ二人は頭から流血しグラウンド上で大の字に気絶してしまった。倒れたまま起き上がらない二人は担架で医務室へ運ばれ、監督同士の協議の結果、試合は中断となってしまう。

兵太と八尾、激突!! 試合中断…
兵太と八尾、激突!! / 試合中断…

医務室では手当を受け、頭に包帯を巻いた八尾が意識を取り戻しベッドから起き上がっていた。試合に戻ろうとする八尾の横でこちらも頭に包帯を巻いた兵太が起き上がり、因縁の二人が何と医務室でも顔を合わせていた…

日高…
日高…


冒険王78年8月号表紙
 78年8月号
78年8月号扉絵
78年8月号扉絵

意識を取り戻し、ベッドに起き上がる兵太。兵太は八尾をみてニヤリとすると、いきなり八尾の顔面めがけ正拳突きを繰り出す!兵太の不意打ちを抜群の反射神経でかわす八尾。「おまえの顔を見たらむかついてきたまでだ」という兵太に再び怒りの炎を燃え上がらせる八尾、医務室での両者の対立はいつ果てるともなく続く…

お前の顔を見たらむかついてきたまでよ もう勝手に死んだらいい
お前の顔を見たらむかついてきたまでよ / もう勝手に死んだらいい

一方、未だに試合が中断となっているグラウンドでは一向に医務室から戻ってこない二人に両校のナイン達もすっかり待ちくたびれていた。武蔵中ベンチでは野々宮(キャプテン)が医務室へ様子を見に行こうとするが、そのとき通路の暗がりに人影が!それは医務室から戻ってきた兵太だったのだが、その姿はなぜか医務室へ行く前よりさらに傷だらけ。顔中あざだらけになった兵太の様相に驚く武蔵中ナイン。

一方尼崎中ベンチに戻った八尾の姿にも監督はじめチームメート達が驚きの声を上げる。そんな周囲の反応を気にも留めないように、傷だらけの右手の甲を舐めながら、八尾は兵太の強さを改めて噛みしめていた。

な、なんだその顔は… 日高という男…あいつは強い
な、なんだその顔は… / 日高という男…あいつは強い

武蔵中ベンチでは、八尾のパンチを何度も顔面に浴びた兵太が、思うように喋れず、長池(一寸法師)に通訳してもらいながらなんとか会話する有様。そんな中、主審がベンチに状況を確認にやって来た。主審は尼崎中ベンチにも状況を確認するが、両校ともプレー続行できるという回答で、試合は約20分の中断を挟んで四回裏、尼崎中の攻撃から再開されることになった。

二番、レフト戸山をサードフライに打ち取った浜本(ハンサム)は八尾をバッターボックスに迎える。八尾はハンサムの初球をピッチャー返し。ハンサムは打球をグラブではじいてしまったものの、ショートのキャプテンがジャンピングキャッチでそのボールを捕球すると、深い位置から一塁へ送球しツーアウトとする。更に四番岡部をスイングアウトの三振に討って取り、二回以降は三者凡退と好調なピッチング、一方、尼崎中も寺内の好投で無失点と互角の戦いを繰り広げる。試合は七回を終了してもなお、一対一の同点のまま回を重ねていた。

試合再開! いいじゃない、そんな細かいこと
試合再開! / いいじゃない、そんな細かいこと

武蔵中が勝ち残る事もあり得るな… うちの大将に殴られて目覚めたのさ
武蔵中が勝ち残る事もあり得るな… / うちの大将に殴られて目覚めたのさ

八回表、武蔵中はハンサムがセンター前ヒットで出塁すると、九番佐久間は送りバントとみせたヒッティングで不意を突こうとしたものの、その打球はゲッツーコースのショートゴロ!チャンスもこれまでと思われたものの、八尾のセカンドへの送球がそれ、ハンサムは三塁へ進塁、佐久間もセーフとなり、武蔵中はノーアウト一三塁のチャンスを迎える。打順はここでトップに戻ってバッターボックスには一寸法師。ここまで好投してきた寺内だったが、ノーアウト一三塁のプレッシャーにコントロールを乱して何とストレートのフォアボールでノーアウト満塁としてしまう。

ハンサム、センター前ヒット! 一、三塁オールセーフ!
ハンサム、センター前ヒット! / 一、三塁オールセーフ!

制球が乱れる寺内… ノーアウト満塁!
制球が乱れる寺内… / ノーアウト満塁!

すっかり追い詰められた寺内は自信をなくし、しきりに八尾に助けを求めるような視線を送る。その様子を見た尼崎中の八野監督はバッテリーと八尾を呼び、八尾へのピッチャー交代を決断する。ノーアウト満塁のピンチに再びマウンドに立つ八尾は、二番諸星(ピーマン)をピッチャーフライ、続く三番キャプテンをファースト東山のファインプレーでファーストライナーに仕留めると一寸法師も帰塁させずにダブルプレーに討ち取り、ピンチを切り抜ける。

おれに助けを求めるな! ピーマン、ピッチャーフライ!
おれに助けを求めるな! / ピーマン、ピッチャーフライ!

武蔵中、勝ち越しならず!
武蔵中、勝ち越しならず!

八回裏尼崎中は八尾の打順。八尾はハンサムの初球を痛打、一塁線を抜く長打とする。ライトの木下(ミミ)がクッションボールをそらしたところをセンターの一寸法師がカバーするが、それを見た八尾は一寸法師の肩の弱さを読んで本塁を強襲する!ホームに突っ込んだ八尾はキャッチャー神戸(クチナシ)と激突!タイミングは完全にアウトだったものの、八尾に体当たりされた神戸は何とボールを落球!尼崎中はついに勝ち越しを決める。だが、八尾と接触したクチナシの顔面は血だらけだった…

大阪の土性骨を見せたる! 尼崎中勝ち越し!
大阪の土性骨を見せたる! / 尼崎中勝ち越し!




以下、Part5へ続く!






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