掲載号 | ストーリー |
77年6月号 |
77年6月号扉絵
大月二中との試合前、グラウンドにやってきた田宮先生、東郷先生にすかさず挨拶する佐久間。今日はおとなしく観戦するという佐久間に反感をあらわにする、神戸(クチナシ)や諸星(ピーマン)。田宮先生は部内の険悪な雰囲気に懸念を抱く。そんな中、武蔵中に到着した大月二中ナイン。引率の野田先生は何と野球未経験。ナイン達の熱意に打たれ、なり手のなかった野球部の監督になってくれた恩情派の先生だ。
険悪な部内の雰囲気 / 大月二中野球部の理解者、野田先生
学校に着いたナインは挨拶もそこそこに試合開始を要望、新装なったグラウンドで早速武蔵中野球部との試合が開始される。先頭バッター、ショート小森がライト前ヒットで出塁すると二番の石岡が送りバントで小森を二塁に進め、三番キャッチャー、キャプテン土浦を打席に迎える。
土浦の見せる一本足打法に驚く兵太。右中間を抜くヒットを放った土浦は二塁ランナー、小森をホームに返し一点先制。自身も二塁に進塁すると、続く四番金子が三塁打を放ち、土浦がホームインして2点目。更にピッチャー青山もライト前ヒット、六番センター中村が左中間を抜く二塁打とさながらフリーバッティングの様相で浜本の立ち上がりを攻める。七番、ライト岩本の犠牲フライで青山がホームインして遂に4点目が入り大月二中は武蔵中を突き放す。
一本足だ!
だが、続く八番レフト安田はストレートを空振りで三球三振。強打と思われた大月二中打線は、実は浜本の変化球に的を絞っていたのだった。ここで反撃に転じたい武蔵中だったが大月二中のピッチャー青山のスライダーに苦戦、一番長池(一寸法師)、二番諸星(ピーマン)が連続三振、頼みの三番野々宮(キャプテン)も三振に倒れ、一回裏を無得点に終わる。
二回表、立ち直った浜本(ハンサム)は九、一、二番を三者凡退に討ち取ると二回裏の先頭打者兵太がライトへのソロホームランでようやく1点。その後は両校とも後が続かず、試合は投手戦の様相を呈する。だが四回裏、武蔵中は大月二中のピッチャー青山が投球動作に入ってからの落球でフォアボールノーアウト一塁。
青山、落球!
更に動揺した青山の一塁悪送球でノーアウト二、三塁とし、兵太の三塁線を破るヒットで二者が生還し四対三と一点差に追い上げる。しかし、三好(ニキビ)、神戸(クチナシ)の凡退でツーアウト一塁、一打同点のチャンスに祈るような思いで打席に立った七番西川(ハム)だったが、ファールになった打球が何と全国大会出場を目指す垂れ幕の紐を切断してしまった。
全国大会出場祈念の垂れ幕が!
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77年7月号 (別冊付録) |
77年7月別冊付録扉絵
一打同点のチャンスに打席に立った西川(ハム)。チームメイトの声援に勇気づけられたハムはこのチャンスに逆転ツーランを放ち、四対五と遂に逆転に成功する。試合はスライダーを多投する大月二中青山とフォークで攻める武蔵中浜本の、両者互角に投げ合う投手戦の様相を呈し回を重ねて既に八回の裏ツーアウト。大月二中は2回以降得点が出来ず、膠着した展開に焦りを覚え始める。特にサッカー部との軋轢で負けられないキャプテン土浦は一計を案ずる。
ハム、逆転ツーラン! / サッカー部との軋轢
土浦はタイムをとって一塁ランナー石岡を呼び寄せて何事かを伝えると、今度はベンチで金子が野田監督に何かを伝える。するといきなりベンチで慌ただしくサインを出し始める野田監督。ピッチャー青山も野田監督にデタラメなサインを出すよう頼んでいた。その瞬間、土浦のサインで石岡が猛然と走り、空振りした土浦のバットはすっぽ抜けてハンサムを襲う!更に二塁進塁を狙った石岡は足を高々と上げた危険なスライディングで、セカンドのピーマンの頬にスパイクの刃を突き立てる!
勝つための野球… / 歪んだ勝利への執念…
凶器のスパイク!
更に地面に叩きつけるように打った一寸法師の打球を、土浦はわざと一寸法師にぶつけるようなコースでファーストへ送球!ベンチからの警告で危うく球をよけたものの、大月二中のあからさまなラフプレーに怒る兵太。だが東郷先生は「腹がたったらバットでかえせ」と兵太をいさめる。
腹がたったらバットでかえせ
試合はピーマンの空振り三振で武蔵中ツーアウト二塁。打席に立ったキャプテンは東郷先生の言葉通りバットでかえすツーランホームランを放つ。更に続く兵太も連続ホームランを放ち、武蔵中は一気に八対四と大月二中を突き放す。
九回表、最後の攻撃に入る大月二中。ラフプレーを強要する土浦のやり方に、ピッチャーの青山は不信感を募らせる。打席に入る土浦に、野田監督もラフプレーの連続を不審がり、「相手チームにけが人でもでれば申し訳が立たない」と心配気に声をかける。
勝つためにはどんな手も… / 野田先生の疑念
チーム内に広がる自分への不信感に、徐々に追い詰められていく土浦…ハンサムとの勝負に挑む土浦だが、フォークとストレート織り交ぜたハンサムの冴え渡るピッチングに三球三振。続く四番金子もハンサムのフォークに手が出ずツーアウト。そして、遂に最後のバッターとなったのはピッチャーの青山だった。勝つためなら手段を選ばない土浦のやり方に反発する青山だったが、皮肉にも手が滑り、バットが打球を追う兵太に飛ぶ!しかし兵太は持ち前の反射神経で打球を押さえると、すかさずバットをかわし、その瞬間八対四で武蔵中の勝利が決まった。
勝つためなら何をしてもいいのか? / 因縁のバット…
値千金の逆転ツーランを放ったハムを胴上げする武蔵中ナイン。その光景を見ながら、大月二中ナインは野田監督の呼びかけで武蔵中の勝利をたたえ、円陣を組んだ。大月二中ナインのエールの中、胴上げされるハムの身体が何度も宙を舞った…
武蔵中の勝利をたたえよう / 宙を舞うハム…
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77年8月号 (別冊付録) |
77年8月別冊付録扉(ひょうたんカメラ訪問)
山の一本杉までランニングしてきた武蔵中ナインは一本杉の根元にもたれ、休憩しながら先日の大月二中戦を振り返る。西川(ハム)はチームのみんなに、自分がファウルボールで全国大会出場祈願の垂れ幕を切ってしまった時、なんとも不吉な予感に囚われた事を打ち明ける。垂れ幕が落ちたことで全国大会にも武蔵中が落ちる気がしたというのだ。そんなハムの考えを「縁起をかつぐとはいかにもハムらしい」と笑う諸星(ピーマン)。一同に、遅れてやってきた長池やあざみ、すみれ、ドングリも合流。その場の楽しい雰囲気に、ハムも心からの笑顔で笑うのだった。
思い出の一本杉 / 縁起をかつぐ?
兵太の家である雑貨店の日高商店では、兵太が店の商品であるペンを持ち出そうとして母親に見つかってしまう。怒られると思い返そうとする兵太だったが、兵太の母はそれがハムへの餞別だと気付いていた。逆に3点セットのペンを勧められ、喜ぶ兵太。ウキウキした気分で部屋へ戻ると、妹のすみれもハムの妹、タエ子に贈り物をしようと頭を痛めていた。
わぁ〜母ちゃん、はなせるっ! / タエ子ちゃんへの贈り物
その頃、市内のショッピングセンターで転校に備えて買い物をしていたハムと妹のタエ子。帰り道に白川の手下の男達とぶつかってしまう。慌てて謝るハムだったが、男達はハムの手にした紙袋の中に封筒に入った現金が顔を覗かせているのに気付いてしまう。
公園までやってきたハム達。しかし、ハムは持っていた現金がないことに気付く。買い物をした洋服屋に忘れてきたと思ったハムは、タエ子をその場に待たせると洋服屋へと慌てて戻っていくが、残されたタエ子はハムが忘れたと思っていた封筒が紙袋の中に入っているのに気が付いた。だが、その時、白川の手下の男達が現れ、タエ子に封筒の金を少し貸してくれと言い寄ってきた。
タエ子の危機
男達に現金の入った封筒を取り上げられ、ピンチのタエ子。その時、公園で世界史の教科書を顔にかぶせて昼寝をしていた中学生が起き上がり、男達を制止するが、何とその中学生は佐久間だった。佐久間は、襲いかかる男達を素早い身のこなしで叩きのめすと、男達から取り戻した現金の封筒をタエ子に返し、名前を聞こうとするタエ子にも名乗らずに去って行った。佐久間の去った後には公園の芝生の上に世界史の本が忘れられていた。その本には「3-A 佐久間」と名前が記されてあった…
返してやれよカッパライ! / 佐久間の反撃!
本の忘れ物…
翌朝、教室では転校するハムへの餞別を持ってこなかった佐久間を野球部の面々が問い詰めていた。個人的に付き合いがなかったとしてもクラスメートではないかという兵太に、我関せずという態度の佐久間。「意地を張っている限り野球部にははいれないぞ」という兵太に、佐久間は「去って行く奴よりも迎える奴を大切にすべきだ」とつぶやいた…
迎えるやつを大切にするもんだぜ…
田宮先生と一緒に教室にやってきたハムが、佐久間が昨日公園に忘れていった世界史の本を佐久間に手渡す。「妹を助けてくれてありがとう」というハムに「本はなくしたもので、昨日は公園にも行っていない」と昨日の公園での出来事を否定する佐久間。ハムはそれでもいいと佐久間に礼を言うが、なぜか佐久間はむきになってそれを否定するのだった。
妹を助けてくれてありがとう
野球部室では野球部の面々や朝倉マネージャー、あざみ、すみれや橋本先生がハムへのたくさんの贈り物と共に拍手でハムを出迎える。兵太は母親に包んで貰ったペンをハムに送ろうとするが、部室の外に番長が所在なげに立っているのに気付く。餞別も持ってこず入りづらいという番長に、兵太は自分のペンを渡し強引に部室に連れ込む。「いつまでも武蔵中を忘れるな」という番長に、感極まり、涙を流すハム…
たくさんのプレゼントが! / みんなからの贈り物
番長、なにをしてるの? / ハムの涙…
ハムを見送りに長野駅にやってきた武蔵中野球部の面々。するとそこにはなぜか荒川中や開明中ナインの姿が。発車まで30分はあると思ってやってきた兵太達に、たった今の列車で出発したと告げる開明中のマイケル。田宮先生の姿を見つけた兵太に、田宮先生はハムは「『最後までウソをついて悪い』と言っていた、みんなに見送られるのがつらかったんだ」、とハムの心情を察するように言うが、いてもたってもいられず駅を飛び出していく兵太達。
遅いじゃないか武蔵中 / 見送られるのがつらかったんだ
線路を見下ろす高台まで走ってきた兵太達の前を、ハムを乗せた列車が東京へ向けて走り去ってゆく。その列車に向けて「みんなの事を忘れるな」と叫ぶ兵太。
遂にハムは武蔵中を去って行った…
みんなの事を忘れるな! / さようならハム!
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77年9月号 |
77年9月号扉絵
武蔵中にやってきた一台の外車。降りてきたのは佐久間の父親と祖父、それに佐久間だった。その光景を偶然見かけた兵太は橋本先生に呼ばれる。応接室に入った兵太を待っていたのは外車から降りた三人。予想外の展開に混乱する兵太に、遅れて部屋に入って来た校長先生、田宮先生も加わり、なんとも不自然な話し合いが始まった。佐久間は父と祖父の力を借り、学校に直談判して野球部入部を認めさせようとしていたのだ。しかし田宮先生は野球部員達が認めなければ野球部への入部は難しい、佐久間がクラスに溶け込むまでもう少し時間が必要だと従来の見解を繰り返した。
やって来た外車 / 佐久間の直談判
話し合いが膠着したまま終わろうとする時、佐久間の祖父は田宮先生の姓から何事か思い当たった様子で先生をとなりの校長室へ誘う。佐久間家は田宮先生の実家である田宮コンツェルンのグループ会社経営を任されており、佐久間の祖父も以前株主総会で大学卒業直後の田宮先生を見かけていたのだった。
佐久間家の正体 / 田宮コンツェルン
田宮先生に頭を下げ、佐久間の入部を頼み込む佐久間の祖父。祖父の搦め手の交渉に、田宮先生も困惑を隠せなかった。
校舎の屋上で兵太から話し合いの顛末を聞いている野球部の面々。田宮先生は佐久間の祖父の頼みを無碍に断ることも出来ず、佐久間の入部を認めたというのだ。田宮先生の突然の心変わりを不審がる兵太達。
老獪な祖父の交渉術 / 佐久間が入部?
そこへ朝倉マネージャーが東京の中学に転校した西川(ハム)からの手紙を持って来た。何とハムの転校した市立第二中は、この間まで佐久間の通っていた中学だったのだ。佐久間は野球部のキャプテンで四番、更にピッチャーもやっており、チームは佐久間のワンマンチーム。佐久間の転校後はほぼ壊滅状態になっているというのだ。佐久間の自己中心的な考え方に危機感を覚える兵太…
ハムからの手紙
その頃、一人野球部室にやってきた佐久間は、部室の壁に掛けられたメンバーの名札を前に祖父を担ぎ出した入部交渉の結果に満足気。ピッチャーの浜本(ハンサム)の名札を外すと、末席に掛けられた自分の札と入れ替えた。意気揚々と部室を出た佐久間は、やってきた東郷先生とすれ違う。佐久間に野球部への正式入部を告げられ、怪訝な表情の東郷先生。立ち去る佐久間の後ろ姿を見送った東郷先生は、部室の名札が入れ替えられているのに気付く。相変わらずの佐久間の不遜さに、憮然とした表情で名札を元に戻す先生。
一方、屋上ではハンサムがあえて佐久間を野球部に迎え、チームワークの武蔵中野球部にワンマンプレーヤーなど存在し得ない事を見せてやろうと提案していた…
爺ちゃんは実力者なんだ / 変えられた名札
佐久間を迎えてやろうじゃないか! / 武蔵中野球部のチームワーク
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77年10月号 (別冊付録) |
77年10月号別冊付録扉絵
全国大会出場に向けて練習に励む武蔵中野球部。と、練習を中断して佐久間の野球部入部が田宮先生から発表された。表面上は入部の挨拶を交わす佐久間と野球部の面々。だが、内心は双方とも腹に一物を抱えたままだった。
佐久間の入部
発表では同時にポジションのコンバートも発表される。キャッチャー→神戸(クチナシ)、ショート→野々宮(キャプテン)、セカンド→三好(ニキビ)、レフト→諸星(ピーマン)、ライト→木下(ミミ)、サード→日高(兵太)、センター→長池(一寸法師)、そして佐久間がファーストに入った。発表を終え、一同に質問がないか確認をする田宮先生にキャプテンが質問をする。今まで一緒に練習してきた補欠メンバー達を差し置き、新入部員の佐久間にレギュラーポジションを与えた事への疑問だ。だが、東郷先生から今までの中学に問い合わせた結果、佐久間を使いたい理由があると言われ、兵太達も引き下がるしかなかった…
佐久間がファーストに / 佐久間を使いたい理由がある
佐久間の入部に揺れるナイン / うまくやっていくしかない
新ポジションによる練習が始まった。東郷先生の打球に飛びつく佐久間の身のこなしに彼の実力を見直す兵太達。だが、練習中に女生徒達と喋っていた佐久間は東郷先生に雷を落とされる。
佐久間の実力 / 東郷先生のカミナリが!
東郷先生に罵倒された佐久間は面白くない。その後も日暮れまで練習を続けるナイン達。ようやく練習が終わり、クタクタになった一同が引き上げようとすると、東郷先生が佐久間と兵太に居残りを命じる。練習に集中していない佐久間に集中力をつけるという名目で、兵太に佐久間への五百本ノックを命じる東郷先生。次々に打ち込まれる兵太のノックを受け、フラフラになりながらもボールに食らいつく佐久間。遂に反吐を吐き、グラウンドに倒れ込んでしまった佐久間は、祖父に言いつけて東郷先生を学校から追い出すと、うわごとのようにうめいてダウンしてしまった。しかし兵太は普段の態度からは思いもよらぬその佐久間のガッツに驚いていた…
練習の後の五百本ノック… / 佐久間のガッツ
のびてしまった佐久間を見て、東郷先生は兵太に佐久間を保健室で休ませるように告げると立ち去っていった。するとその兵太に、帰らずに待っていたキャプテン達が声を掛けてきた。保健室に佐久間を連れてきた兵太達はベッドに佐久間を寝かせる。兵太は保健の橋本先生に、懸命に兵太の打球に食らいついていた佐久間の様子に感激したと話す。兵太は今まではキザでいい加減な奴だと思っていた佐久間の、ノックの時の懸命な様子に、野球部に入りたい一心で長池番長のノックに耐えた2年生の時の自分の姿を重ねていたのだ。
おれ感激しちゃった / あのときのことを思い出しているんだろ?
その時ダウンしていた佐久間が目を覚ました。自分をひどい目に遭わせた東郷先生を、祖父の力で学校から追い出してやると息巻く佐久間に、橋本先生は佐久間の入部の為に田宮先生に頭を下げて頼んだのは、ほかならぬその佐久間の祖父なのだと告げる。「あなたはおじいちゃんを尊敬するあまり偶像化しすぎている」確かに立派な人だが神様ではない、それぐらい区別できるだろうと強い言葉で佐久間を諭す橋本先生。
頭を下げたのはお爺ちゃんの方よ / 情けない、それくらい区別できるでしょ
橋本先生の言葉にショックを受けたものの、それでも納得できない佐久間は祖父に頼んで田宮先生、東郷先生を佐久間家に呼びつけ特訓の理由を説明させる。武蔵中野球部は、以前佐久間のいた市立第二中とは練習量も比較にならないほど多く、今の佐久間の力では守備の面でレギュラーとしては力不足であり、全国大会に向けてハードになる練習についてこられないようなら、野球部を辞めて貰うしかないと語る田宮先生、東郷先生の説明に、佐久間の祖父も筋が通っていると納得した。てっきり先生達を罵倒してくれると思っていた佐久間はその祖父の様子に動揺する。佐久間の目論見とは逆に、優勝の経験を味わいたいのなら先生達の指導を仰ぎ、練習のつらさに耐えて花を咲かせろと逆に佐久間を叱咤する祖父。完全に当ての外れた佐久間は、その祖父の言葉を受け入れざるを得なかった。
筋は通っておる… / ならばそのつらさに耐えてみろ
毎日の練習でも事あるごとに佐久間に厳しい檄を飛ばす東郷先生。これには佐久間に反感を持っていたチームメート達も思わず同情的な感情をもってしまう程だ。以前の学校でのポジションであるピッチャーとしての起用は考えていないと佐久間に告げる東郷先生。新たなポジションであるファーストとしての守備力向上のため連日居残り練習を指示する東郷先生にも、自分の尊敬する祖父から叱咤された佐久間は、グラウンドに掲げられた全国大会出場祈願の垂れ幕を見つめ、おとなしく従うのだった。
ピッチャーとして使うつもりはない
そんな佐久間の様子に、練習を終え、部室に引き上げる兵太達にクチナシは「今のやつだったらうまくやって行けそうな気がする」と、佐久間の変わり様を好意的に感じ始めていた。そして、その感情はまた、兵太達一同に共通する思いでもあった。
うまくやって行けそうな気がするぜ
その頃練習を終えた佐久間は一人夕暮れの河原で夕日を見つめて佇んでいた。その時、部室に現れなかった佐久間を探してやって来た兵太達が河原に現れる。佐久間を待っていたという兵太の言葉に意外な表情の佐久間。兵太達は全国大会地区予選の組み合わせ抽選会が明日行われるということを佐久間に知らせたかったのだ。地区予選の開始に気持ちを高ぶらせる兵太達の様子を見て、佐久間は「おれは今まで自分をあまりにも買いかぶり過ぎていた」と、素直に自分の非を認める。そんな佐久間の反省の様子に、兵太は一緒にやろうと声を掛け、その言葉に応じた佐久間と兵太は固い握手を交わし、共に地区予選に臨む意思を固める。
おれは自分をかいかぶり過ぎていた
そんな佐久間達の様子に、俺とも握手をしてくれと頼むクチナシ。キャプテンやハンサムも佐久間を迎え入れて一同はようやく打ち解け、共に全国大会での優勝を誓うのだった。
優勝旗を武蔵中へ!
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77年11月号
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77年11月号扉絵
兵太達武蔵中野球部の目指す、中学野球選手権大会全国大会会場会場が東京の明治神宮野球場に決まった。テレビや本でしか見たことのない憧れの神宮球場。その名前に兵太達の心は躍った。全国大会に出場出来れば東京に行ったハムにも会える。ハムの名前を聞いて兵太は少し感傷的になった。
会場は神宮球場だ / これは痛い!
地区予選の抽選会に田宮先生、野々宮(キャプテン)、朝倉マネージャーが出かける。一回戦の対戦相手決定を前に授業にもまるで身が入らない兵太達。昼休みになると、授業終わりのベルが鳴るのももどかしく部室から道具を取り出し練習の準備を始める。と、そこへ抽選会に行っていたキャプテンが帰ってきた。地区大会は4ブロック、出場32校で行われ、一回戦の相手校は伊那三中に決まった。
初戦の相手は伊那三中だ / 地区予選の注目校!
いよいよ開始された地区予選。武蔵中は伊那三中を浜本(ハンサム)の力投で8対0の完封で下し、二回戦に駒を進める。宿敵の開明中、荒川中も共に一回戦を順当に勝ち進んでいた。順調に勝ち進む武蔵中は二回戦を6対2、三回戦を9対3で勝利し、開明中、荒川中と共にベスト4進出を決める。
武蔵中 初戦突破!
だが、ベスト4に進んだもう一校、ダークホースの佐久二中が武蔵中の前に大きく立ちはだかった。佐久二中のエースは一年生ながらオーバースロー、サイドスロー、アンダースローを自在に投げ分ける変則ピッチャー、茅野だ。試合前に女生徒達のサイン攻めにあっていた武蔵中ナインの前に現れた茅野は、兵太達に皮肉めいた態度で武蔵中の戦力を充分研究している事をほのめかす。
ダークホース、佐久二中! / 不敵な茅野の挑発
いよいよ開始された準決勝第一試合。武蔵中と佐久二中の一戦。佐久二中の先頭バッターの打球はライトフライと思われたものの、グングン伸びてライトスタンドに入る先制ソロホームラン。続く二番打者にもレフト前ヒットを打たれ、二塁打とされると、何と三番富山は送りバント。ワンアウト三塁とすると四番、茅野の打順となった。小さな身体で大きく構えた茅野はここでいきなりスクイズ!佐久二中に2点目をもたらした。
先頭打者先制ホームラン! / 茅野、意表を突くスクイズ!
続く五番をなんとか仕留め、初回の攻撃に移る武蔵中。初回に2点を先制された武蔵中は、武蔵中打線攻略に不気味な自信を見せる変則ピッチャー、茅野に果たしてどう挑む?
立ちはだかる変則ピッチャー、茅野!
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