SUB:御町内特撮救助隊SFXボイジャー(239L)
RE:753
空。
満身創痍のラピッド・スターに、凄まじい勢いでビームの集中砲火を浴びせ続けているシュトゥルム!大空が、無数の電子ビームのきらめきに満たされる!

ラピッド・スターコクピット。
ラピッド・スターの周囲では、シュトゥルムの発するおびただしい電子ビーム為に空気がイオン化し、時折青空に稲妻が走る!

稲妻が光る度、コクピットは耳を被うばかりの轟音に包まれる。
機体が低周波の唸りにブルブルと震え、モニターの映像が瞬間、大きく乱れる!
必死の表情で操縦捍を握るリエ!

前部操縦席のケンタ、キャノピーガラスに映し出されるレーダー映像を見つめている。見る見るラピッド・スターに迫るシュトゥルムの反応…

ケンタ
「くそぉ……(リエを振り向き)やっぱりムリだよ!パワーもスピードも、今のラピッド・スターじゃ、シュトゥルムには全然かなわないよ!!」

そのケンタの言葉に、悔し気な表情で一瞬、ケンタの顔を見つめるリエ。
しかし、ケンタの言葉には応えず、再びモニターの映像、シュトゥルムの反応を眼で追いかける…

リエを見つめるケンタ…

リエ
「(モニターの座標を見ながら、悔しそうな表情でつぶやく)…もう少し…後もう少しなのに…」

その瞬間、ラピッド・スターの機体のすぐ脇を、シュトゥルムのビームが強烈な閃光を発しながらすり抜ける!一瞬の後、凄まじい衝撃波がラピッド・スターを襲う!!

リエ
「キャーッ!!」

ケンタ
「ウワーッ!!」

暗い空間。
飛行機のエンジン音を想わせる音が低く響いている暗い空間。
狭く、薄暗い空間のあちこちで、パイロットランプが色とりどりの光を放ちながら瞬いている…

と、その空間の中で、新たなエンジン音がし始める。
薄暗い空間の中、一つの機体が浮び上がる…
カタパルトにセッティングされている様である…
あの大型V-TOL輸送機の機内。
その機体の脇にたたずむ機長。

機長
「(機体を見上げる。緊張した表情で)すぐに圧力隔壁を閉鎖し、カタパルトデッキの減圧を行います。減圧完了次第、後方のハッチを解放しますから、カタパルトのコントロールはそちらでお願いします。」

その機長の言葉に、先程の声が応える。


「分かりました。…機長、時間がありません。すぐにお願いします。」

機長
「了解!!(コミュニケーターのボタンを押し)…カタパルトデッキ減圧開始!圧力隔壁を封鎖、後部ハッチ開口準備!」

コミュニケーターの声
「了解!!」

小走りに前方の扉から出て行く機長。
扉が閉まると同時に、カタパルトデッキ前方にカメラの絞りを想わせる圧力隔壁が現われる。閉じられて行く隔壁…

空気の噴出する様な音と共に、デッキ内部の減圧が行われて行く…

モニター映像。
ビデオを想わせる、粗い走査線の入ったモニター映像。
画面の片隅にデッキ内部の減圧状況がデジタル表示されている。
外気圧との差がゼロを示して点滅する。

カタパルトデッキ。
後方のハッチが鈍い作動音と共にゆっくりと開き始める…
薄暗いデッキ内部に光が射し始める。

冷たい外気が一気に流れ込み、デッキ内部に一瞬、霧が沸き上がる。
渦巻く霧と光の中、カタパルト上に一つの機体が浮び上がる…
真新しい装甲に身を包んだトゥースの姿!

その背中のジェットパックが徐々に出力を上げ、ジェットノズルがジェットの炎に輝き出す!
デッキにジェットの噴射音が木霊する…

モニター映像。
解放された後部ハッチから青空と、その下に広がる東京の街が映し出されている。
モニター上に

『Catapult control system: Connected』
『Connective condition: All Green』
『EJECT IS READY』

のディスプレイ。

カタパルトデッキ。
益々ジェットパックの出力を上昇させるトゥース。
その背中が青白く輝き、デッキ内部にジェットの噴射雲が渦を巻く!

トゥース
「…行くぞッ!!」

態勢を低くし、衝撃に備える。
トゥースのカメラアイ、グリーンのパイロットランプがともる。

その瞬間、カタパルトが唸りを上げ、トゥースの機体を空中に撃ち出す!!
トゥースの背中のジェットパックが、最大出力でトゥースの機体を支え上げる!

見る見る青空に溶け込んで行くトゥースの機体…
と、彼方でジェットの炎が噴き上がり、トゥースが上昇してゆく…
その機体が一瞬、目映い反射光を発する!

輸送機操縦席。
操縦席後部のドアを開け、機長が入って来る。
操縦を担当していた副操縦士が振り向き、機長に声をかける。

副操縦士
「機長、発進完了です。カタパルト射出もうまく行った様です。」

機長
「そうか…(前方、窓の外を見つめ)…頑張って下さい、トゥース…」

空中。
シュトゥルムは既にラピッド・スターのすぐ後方にまで迫っている。

シュトゥルム操縦席。
操縦席前方、亜全周スクリーンに映るラピッド・スターの姿。

シュトゥルムの少し下方を、メインドライブから真っ白な飛行機雲を引きながら
飛行している…

操縦席のドクター・ジャンク、余裕の表情でゆっくりとスクリーン上のラピッド
・スターにビーム砲の照準を合わせて行く…

スクリーン映像。
ラピッド・スターの機体にターゲット・ポイントがロックされる。
短い電子音が何度か鳴り、照準がロックされた事を知らせる。

スクリーンの片隅で

『Sight mode: Automatic target-tracing』

のディスプレイが点滅し、ラピッド・スターの動きに合わせ、ターゲット・ポイ
ントも移動して行く…

スクリーン上のラピッド・スターとの距離は、尚もゆっくりと縮まり続けている。

ジャンク
「(微笑み)…良くやった…あなたは本当に良くやったよ、お嬢さん。…さすがはゲンザブロウの孫。その意志の強さ、彼奴に勝るとも劣らん程だ…だが、あなたが私に敵対する存在である以上、私はあなたとそのメカニックを、排除せねばならん。…残念な事だ。……せめてもの私の情けだ。(感情を高ぶらせ)…その機体、一撃で粉々に粉砕してやるッ!!」

手の甲の電極にタッチするジャンク!

が、その瞬間、操縦席内部に甲高い電子音が鳴り響く!
スクリーン上に表示される

『CAUTION! Beam cannon system is un-control.
 Status : System error
 Additional status: Unknown system malfunction 』

のメッセージ!

ジャンクは慌ててアラームを切ろうとするが、アラームは全く止まらない。

ジャンク
「どうした!?一体何が!?…(ハッとして)…まさか!」

と、その時、機体全体に激しい衝撃が走る!

ジャンク
「ウッ!…何だ?…(スクリーン上にサブカメラ映像を開く)…ん?…
     彼奴は!」

スクリーンに映し出されるトゥースの姿!
シュトゥルム目がけて一斉にミサイルを発射する!
炸裂するミサイルにサブカメラが破壊され、映像が映らなくなる!

ジャンク
「(悔し気に)おのれ!よりによってこんな時にッ!!」

空。
シュトゥルムの機体目がけてアーム・バルカンを発射するトゥース!
バルカンを連射しながらシュトゥルムの機体下部に回り込む。
シュトゥルムの腹部目がけて対戦車バズーカをぶち込む!!

トゥース
「(つぶやく様に)…降下速度をもっと落すんだ…出来るだけ滞空時間
     を稼がなければ…」

背中のジェットの出力を更に上昇させるトゥース!

ラピッド・スターコクピット。
コクピットのリエとケンタ。突然の加勢に驚き、この光景を見つめている。

ケンタ
「(操縦席から身を乗り出しながら)あのロボット…(表情を輝かせ)…ロボット・チームのトゥースだ!!」

リエ
「(感動した様子で)…私達を、援護してくれてる…(明るく)ケンタ、行くわよッ!!このままお父さん達と合流するわ!!」

ケンタ
「(力強くうなづき)ウン!!」

力一杯スロットルレバーを握るリエ!
ラピッド・スターは一直線にランド・チャレンジャーに向う!

ランド・チャレンジャー操縦席。
レーダーモニターを見つめるショウイチ。ラピッド・スターの反応に注目する。

ショウイチ
「よおし!…(ゲンザブロウを見て)…ラピッド・スター、こちらとの合流態勢に入りました。こちらも全砲門発射態勢を継続!」

ゲンザブロウ
「(うなづき)…ウム。(ほっとした様に)しかし、全く危ないところじゃったな…」

ショウイチ
「ええ、あのロボットの援護がなければ、今頃…」

ゲンザブロウ
「よし、シュトゥルムの注意をこちらに引き付けるんじゃ!射程距離に入り次第、威嚇砲撃を!」

ショウイチ
「分かりました!」

パトカー前のオオツカ達。
空を見上げる。遥か上空で展開されるシュトゥルムとトゥースの戦闘を見つめる。

イマイズミ
「(興奮気味に)いいゾ!、そこだッ!!」

オオツカ
「間に合ってくれたか…頼むぞ…」

インカムを取るオオツカ…

八重洲通り。
大通りの中央でこの様子を見上げているワンディム、サーディー。

ワンディム
「あれは…一体?…トゥース、トゥースなのか!?」

サーディー
「ジェットパックを使用して降下速度を落し、疑似的に空中戦を…」

ワンディム
「トゥース…凄い、凄いぞ!!」

と、ワンディムのコミュニケーション・システムが鳴る。

ワンディム
「はい、ワンディムです。」

オオツカ(声)
「お前達何してる!トゥース一人にシュトゥルムを任せるつもり
        なのか!? 」

ワンディム
「(ハッとして)…警部……それでは?…」

オオツカ(声)
「(力強く)トゥースを援護、シュトゥルムに一斉攻撃!」

ワンディム
「警部…(万感の思いで)…了解ッ!!」

サーディー
「(嬉しそうにワンディムを見て)…ワンディム…」

ワンディム
「ああ。…行くぞサーディー!!」

サーディー
「了解です!!」

シュトゥルムの真下に回り込むべく、ホバリングを開始するワンディム、そしてサーディー…


〜 つづく 〜

~ 初出:1995.05.14 Nifty Serve 特撮フォーラム ~

Copyright: ohshima 1995, 2018