SUB:御町内特撮救助隊SFXボイジャー(165L)
RE:480
八重洲通り。
大通り上空のアース・ムーバー。
アース・ムーバー操縦席。
ショウイチがモニターでシュトゥルムに照準を合わせる。
モニター。
モニター上にターゲットスコープが映し出される。
モニターの周囲にはスコープの中心の座標と測距情報が、照準位置の移動に伴って、チラチラと変化しながら表示されている。
正面、大通りに立ちはだかるシュトゥルム。
その胸部に照準が合う。短い電子音が鳴り、点滅するスコープ。
ショウイチ、モニターから顔を上げ、ゲンザブロウを見る。
ショウイチ
「照準、ロック!」
ゲンザブロウ
「(うなづき)よし、発射じゃ!」
ショウイチ
「ハイッ!!」
発射ボタンを押し込むショウイチ!
八重洲通り上空のアース・ムーバー、シュトゥルムに向かってゆっくりと前進しながら、ランド・チャレンジャーの大型2連装砲を発射する!
轟く轟音!!
周囲のビル街、ビルの窓ガラスが衝撃でブルブルと震える!
シュトゥルムの機体で相継いでパッと火花が散る!
連続して起こる凄まじい爆発!!
強烈な爆発に思わずたじろぐシュトゥルム!
バランスを崩し、脇のビルに倒れかかる。
ビルの壁面がガラガラと崩れる!時折起こるスパーク…
もうもうたる土煙が立つ。
ランド・チャレンジャー操縦席。
モニターでこの様子を見ているゲンザブロウ、ショウイチ…
ゲンザブロウ
「(ショウイチを見て)…ショウイチ、コミュニケーション・システムのスクランブルを解除しておくれ。ジャンクと、いや、ウォルフシュタインと話がしたい…」
ショウイチ
「(ハッとした様にゲンザブロウを見て)…エッ?…ですが、お父さん…」
ゲンザブロウ
「(うなづき)…確かに、スクランブルを解除する事は、我々の通信周波数帯を教える事になる…じゃがな、ショウイチ。ワシは出来れば、このまま街なかで戦闘を続ける事は避けたいんじゃ。それにもし、ウォルフシュタインを説得する事が出来れば…」
しばし考え込むショウイチ…決心した様に顔を上げる。
ショウイチ
「…分かりました。スクランブルを解除します。」
ゲンザブロウ
「(嬉し気に)ありがとう…」
ゲンザブロウを見てうなづくショウイチ。コンソールパネルを操作する。
シュトゥルム操縦席。
斜めに傾いたシュトゥルムの操縦席。
正面の亜全周スクリーンに映し出されるもうもうたる土煙。
その煙の彼方、アース・ムーバーの機影が浮び上がる…
スクリーンには目まぐるしくサブ・ウインドーが開き、機体各部のチェック状況が映し出されている…
操縦席のドクター・ジャンク。この状況の中でも全く冷静な様子。
正面のスクリーンを見つめている。
スクリーンには、徐々に接近を続けるアース・ムーバーの姿…
ジャンク
「(つぶやく様に)…出て来おったな、重機動マシーンめ…(微笑み)…しかしゲンザブロウ、このシュトゥルムの前にはいかなるマシーンも無力だぞ。」
と、コミュニケーション・システムが鳴る。
スクリーンにサブ・ウインドーが開く。
『Communication signal arrival/ type identification: "unknown"』
のメッセージが点滅している。
不審そうな表情でしばらくメッセージを見つめるジャンク。
コール音が鳴り続けている…
ジャンク
「……一体、何者だ、ここに直接通信して来るとは…(ハッとして)まさか!」
瞬間考えていたジャンク、サブ・ウインドーの信号解析ボタンに視線を合わせる。
短い電子音が鳴り、システムがチューニングを開始する。
新たにコミュニケーション・ウインドーが開き、ノイズの中から映像が現われ始
める。信号が安定し、映像が鮮明になる。
モニターに現われるゲンザブロウの姿…
思いがけず現われたゲンザブロウに、一瞬驚きの表情を見せるドクター・ジャンク。
しかし、すぐにその表情を押し隠し、虚勢を張るように不敵な笑みを浮かべる。
ジャンク
「…(ニヤリとして)ほほう、これはこれは、ドクター・タナカではありませんか?随分と御無沙汰でしたな…」
ゲンザブロウ
「…すぐに破壊活動を中止したまえ、ウォルフシュタイン。」
ジャンク
「(真顔になり)…その名を聞くのは随分と久しぶりだ。もう忘れかけていたよ…」
ゲンザブロウ
「ウォルフシュタイン…君は自分が何をしているか分かっているのか?」
ジャンク
「勿論だとも。…(息をつく)…実験だよ、ゲンザブロウ…私は今、壮大な実験に取り掛かっていた処だ。」
ゲンザブロウ
「実験?…都市を破壊して何が実験だというのだ!?」
ジャンク
「私が真の創造主であるかどうか、それを明かにする為の実験だよ。」
ゲンザブロウ
「馬鹿な事を…君のその思い上がった振舞で、一体どれだけの罪のない人々が、迷惑を被っている事か…ウォルフシュタイン、君はそれを考えた事があるのか!?」
ジャンク
「ゲンザブロウ…この実験は、決して独り善がりな思い上がりではない。数々の事実が導き出した帰結だ。…このシュトゥルムが、本当に心あるロボットであるかどうか…私はこの大いなる疑問に、答を見いだす義務があった。シュトゥルムを自らの手で創り出した、創造主としてね……だが…(嘲る様に)…どうやらそれは私の取り越し苦労だった様だ…」
ゲンザブロウ
「何と言う事を…(しばらく目を臥せる)…だがウォルフシュタイン…ならば、もう気が済んだろう。これ以上無益な破壊を続ける必要はなくなった筈。…どうか…どうかこのまま、この場を立ち去ってはくれぬか?」
ジャンク
「………」
ゲンザブロウ
「どうじゃ、ウォルフシュタイン?…」
ジャンク
「………」
ゲンザブロウ
「…ウォルフシュタイン…」
ジャンク
「…済まんが、それは出来んな。」
ゲンザブロウ
「何ッ!?」
屋上。
ラピッド・スターが不時着しているビルの屋上。
ケンタがドライブシステムのカバーを外し、メインドライブの破損状況を調べている。
それを心配そうな表情で後ろから覗き込んでいるリエ。
リエ
「(心配そうに)…どう?」
ケンタ
「…Bドライブがかなりやられてる。特に反応制御系回路がひどいゼ。…こりゃー、ドライブユニットをまるごと交換しなきゃ…」
リエ
「…何とか応急修理できないかしら?」
ケンタ
「無理だよ!今のラピッド・スターはドライブの反応を制御できないんだゼ。下手するとドライブが爆発しちゃうゾ!」
リエ
「でも、シュトゥルムが相手じゃ、いくらランド・チャレンジャーだって…」
ケンタ
「うーん…」
考え込むケンタ。
脈ありと見たリエ、期待を込めた表情で、考え込んでいるケンタを見つめている…
上空。
シュトゥルムと相対し、沈黙を続けるアース・ムーバー。
不気味な静寂が周囲を包んでいる…
〜 つづく 〜
~ 初出:1995.03.05 Nifty Serve 特撮フォーラム ~