SUB:御町内特撮救助隊SFXボイジャー(150L)
RE:225
東京上空。
空中に静止したヴォルカティック。

その超大型排熱システムが轟音をあげ、足元の東京の街に向って強烈な熱気を噴き出している。

強烈な熱気の為に、ヴォルカティックを取り巻く空気が揺らめき、その機体は陽炎に包まれている。

ヴォルカティックを取り巻く様に配置された小型排熱装置。
時折、姿勢制御用のジェット噴射ノズルが角度を変え、排熱装置は忙しくその方向を変えながら熱気を噴き出し続けている…

東京の空。
東京の空に浮かんだヴォルカティックと排熱装置の巨大な円。

排熱装置の生み出す強烈な熱気は、やがて強い上昇気流を生み、先程まで良く晴れていた東京の空、ヴォルカティックの上部に、巨大な雲を作り出して行く…

街角。
インフォメーション・ディスプレイの気温表示が、先程から急に上昇を始めている。
みるみる上昇を続ける気温表示。

あっと言う間に40度を示す…

ヴォルカティック操縦席。
タバタがコンソールを操作しながら、地表の気温をモニターしている。

正面のモニターには、東京の街のサーモグラフィーが表示され、刻々と上昇を続ける気温の状況が表示されている。

ヴォルカティックの直下を中心に、その表示は高温を示す赤い色に変わって行く…

タバタ
「(満足気に)…ヴォルカティックの加熱能力は、全くすばらしゅうございます。このまま行けば、あと数時間で地上の気温は50度になりますでございます。」

モニターを見ながらニヤリと笑みをもらすタバタ。

タナカ鉄工所。
工場の入口に、シラハタ電気の文字を大書きしたバッテリーカーが停まっている。

シラハタと電気店の従業員がタナカ家の裏庭で、クーラーの室外機を設置している。超小型のロボット・フォークリフトを使い、手際良く取り付けをして行く。

その様子を、ニコニコしながら御機嫌で眺めるショウイチと、リエ、ケンタ。
先程から急に暑さが増し、皆、汗を拭き拭き取り付けの様子を見守っている。

シラハタ
「(汗を拭きながら一同を振り返り)…さぁ、終りましたよ。」

ショウイチ
「(にこやかに)どうもありがとうございました。」

シラハタ
「いやぁ、木造の建物に取り付けるの久しぶりだったもんで、苦労しましたよ。」

ショウイチ
「え?…あ、ハハハ…」

と、ユキコが麦茶を持ってやって来る。

ユキコ
「…ハイハイ。どうもお疲れさまです。(クーラーを見て)あ、取り付け終ったんですね。(シラハタ達を見て)…どうもありがとうございました。暑いのに無理言っちゃってすみません。さ、麦茶でも。」

シラハタ
「あ、すみません。奥さん、無事に取り付け終りましたからね。すぐお使いになれますよ。…(コップを受取り)…じゃ、頂きます。…それにしてもさっきから急に暑くなってませんか?…気のせいかな?」

ショウイチ
「…そういえば、そうですね。…これはこの夏一番の暑さかも知れないぞ。」

リエ
「…でも、今日からはクーラーのおかげで快適ってワケね?」

ショウイチ
「(胸を張って)…そうだゾ。見たかお父さんの偉大さをッ!」

ケンタ
「そんなのどうでもいいから、早くクーラーつけようゼ!」

リエ
「そうね。…(ケンタを見て)…行コッ。」

ケンタ
「ウン。クーラークーラーッと。」

そそくさとクーラーのスイッチを入れに、家の中に入ってしまうリエとケンタ。

ショウイチ
「あ、ちょっと待ちなさい、記念すべきクーラーの始動スイッチはお父さんが押すんだぞ!」

リエ達に置き去りにされ、慌てて後を追うショウイチ。
その様子を呆然と見送るシラハタ達とユキコ。

シラハタ
「(苦笑しながら)…ショウイチさんも大変だなぁ…」

ユキコ
「え?」

幕張発電所。
東京に電力を供給する発電所の中央制御室。

先程から急激に発電所管轄地区の電力需要が高まり、制御室には発電量の限界を知らせるアラームが鳴り続けている。

慌ただしい動きを見せる係員達。頻りに各方面との連絡を取り合っている。

制御室に入ってくる発電所所長。
と、一人の係員が駆け寄り、状況を報告する。

所長
「(係員を見て)…おお、マキムラ君。どうだね、状況は?」

係員
「はぁ、先程から急激に都心部の気温が上昇、午後2時現在の気温が42.5度を記録しています。それに伴って、冷房用の電力需要が急増し、現在8基の発電機をフル稼働させていますが、需要に追い付けそうもありません。このままでは供給が追い付かなくなり、停電する地区が発生するものと思われます。」

所長
「他の発電所や電力会社への連絡は?上越電力へは緊急送電を要請したのかね?」

係員
「…それが、上越電力の方もこの所の猛暑で、電力需要が発電容量に迫る勢いだそうです。とてもこちらに配電する余裕がないと…」

所長
「何だと…至急大口利用者に連絡を!極力電力消費を押さえて貰うんだ!」

係員
「分かりました!」

電話へと駆け出す係員。それを不安気な表情で見送る所長。

所長
「困った事になったぞ…」

タナカ家。
居間のなげしの上に、最新型のクーラーが取り付けられている。
そのクーラーの下に、リモコンを持ったショウイチとリエ、それにケンタ。

ショウイチ
「では、いよいよ記念すべきクーラーの始動だ。(リエとケンタを見る)…いいな?…よし、…スイッチ、オン!」

リモコンのスイッチを入れるショウイチ。
しかし、どうした訳か、クーラーは全く動かない。

ショウイチ
「アレ?おかしいな。…(思いきりリモコンのボタンを押し)…始動!…始動ッ!!」

ケンタ
「父ちゃん何やってんだ、動かないゾ!」

ショウイチ
「おかしいな、このボタンで動く筈なのに…」

リエ
「ちょっと貸してみて…(ショウイチからリモコンを受け取る)」

リモコンを受け取ったリエ、リモコンを調べる。
リエもスイッチを入れようとするが、やはりクーラーは動かない。

しげしげとクーラーを見るリエ。

リエ
「…!お父さん、電気が来てないわ!」

ショウイチ
「え?何だって?」

リエ
「コンセントはちゃんと入ってるし…」

と、後ろでケンタが声を上げる。

ケンタ
「テレビも映んないよ!」

ショウイチ
「テレビも?………停電だ!」

リエ/ケンタ
「エーッ!!」

言い知れぬ沈黙に襲われるタナカ家の居間…


〜 つづく 〜

~ 初出:1994.08.21 Nifty Serve 特撮フォーラム ~

Copyright: ohshima 1994, 2018