凡 人 の 憂 鬱
「ウルトラマンティガ」第43話「地の鮫」を観ました。力作だと思います。ストーリーとしても、結末へ向けての大きな物語のうねりを予想させてくれる展開だったし、ドラマも特撮も緊迫感のあるいいカットが続出していました。テレビの、しかも連続ドラマ作品で、こんな特撮カットが観られるのは、なんと贅沢な事でしょう。
…にも関わらず、観終わった後に私の心に残る、この何とも後味の悪い感覚はなんだろう?それが何とも引っかかって、私はこんな不穏な文章を書く事になるのですが…(関係者の方、もしコレを見てたら本当にゴメン。ネットで露骨な、しかも歪んだ文章を見るのは、非常に不快な事だとは思いますが…でもこういう赤裸々な恥ずかしい感想って、あんまり眼にする機会もないと思うんで…敢えて書きます)。
自分なりにこの感覚を分析してみると、多分その原因は唯一点、ダイゴがスパークレンスを奪われる、あのシークエンスにあるのだと思えます。正直アレは「ウルトラマンレオ」の第一話でセブンがブラックギラス、レッドギラスに足を折られたのとおんなじ位、私には後味悪いシーンでありました。ああ、ダイゴが本当に普通の(あるいはただの)人間であるという事が、こんなに真っ正面から描かれてしまうのか…って、正直泣けました。
確かに変身アイテムを落す、なくす、奪われるというシチュエーションは、過去のウルトラシリーズでも定番的なもので、殊にダンなんかはしょっちゅう盗られていた訳ですが、今迄の描き方だと、主人公が油断をしてるとか、ほんとに落したとか、気絶してる隙にとられたという描き方でした。ところが今回は強奪、しかもチンピラみたいなお兄ちゃん(高良さんゴメン、ルシファーは好きだったんだよぉ…)にノされて取り上げられるという…これはショックでしたね、私。このノリってかの「アメリカン・ヒーロー(マル中マークの3枚目ヒーロー)」とか「スーパーマン3」「ロボコップ2」とかの、あのノリではないですか…
なんかあのシーン、私の心の中では、ティガの石像が悲しい音をあげて砕け散った気がしました。確かにただの人間が、尚且つダメージ受けてる状態で、自分より強い人間に襲われれば、現実的に考えてまぁ、ああいう結末になるんでしょうが…でもそれでは余りに寂しい。多分そういう感情の底には、どこかでステロタイプなヒーローを求めてる自分が露呈してて、何だか恥ずかしい気もするんですが、それでも、こういう形でおとしめられるヒーローは観るのツラいです。非常に恥ずかしい言い方をすれば、自分の憧れが叩き壊された様な感覚とでも言うんでしょうか?
ドラマ的に考えれば、効果的な作劇ではあると思います。誤解のない様に言っておくと、これは小中氏の脚本、村石氏の演出を否定するとか、そう言うんではなくて、あえて言えば感性の違いなんで、ちょっと言いずらい処はあるんですが…個人的には子供番組のヒーローに、余り観ててツラくなる(ヒーローとしてのイメージを壊すとか、失墜させるとか…)様な事は、しないで欲しいです。
このコメントは非常にピンポイント的なものなので、このコメントをもって私が43話を全否定したという訳では決してありません。総合的にみれば、43話はシリーズ中でも力のこもった佳作であるというのが、私の感想です。ただ、ヒーローに対する個人的な信条みたいなものが私にはあって、そこが結構痛かったのです、今回の話。恐らくこの部分については、全く正反対の感想を持つ方もいらっしゃると思います。そういう意見もあるだろうとは考えた上で、やっぱり書いて置きたかったのです。
…此処まで書いて振り返ってみると、予想通り大分破綻した文章になってしまった様です。赤裸々とか書いて置きながら言い訳一杯してるし…でも評価に関しては上に書いた通りなので、それ以外に関しては「イラストレーテッド」の方で書く事にします。
1997.06.28