上正の意地悪ッ
(敬称略・いやはや...)
え〜、「ティガ第49話」観ました。このエピソードのファンタジーとしての側面や、物語の根底を成す、初期ウルトラシリーズへの、上原氏の想いみたいなものには、それなりに感じる部分はあったんですが、結局、上原氏は脚本を書く事は承諾したものの、「ウルトラマンティガ」を書く事に対しては、はっきり拒否の回答を提示しましたね。多分脚本を受けた段階から、シリーズの1エピソード的なストーリーを書くつもりは、全然なかったんでしょうけど。
まぁ、依頼された上原氏も、かなりとまどったとは思うし、本心かなり迷惑に感じたかも知れないけど。「なぜ俺なんだ?」っていう感じかも知れません。かく言う私だって、金城哲夫氏や円谷一氏、それに円谷英二氏のお名前を、こんな形で、しかも本編で見られるって事に対しては、確かに琴線に触れるものはあるんですよ、エンディングクレジットもサービス満点だったし。でもやっぱり、これを「ティガ」でやる必要があるのか?っていう疑問は最後まで頭から離れませんでしたね。ここまで来ると世界観とかとは次元の違う話じゃないかな?ちょっと30分かけて円谷の企業PR番組を観せられた様な気もするし(いやはや…)。『良い子のみんな、いいかい?良く聞くんだよ。「ティガ」には円谷英二氏や当時のスタッフの熱い想いが延々と受け継がれているんだ。円谷プロはこれからも皆んなの夢を作り続けていくんだ!いつまでも、いつまでも…』って、関口宏氏辺りに目を潤ませながら語られてるみたいで、結構ツラいかも(いやはや…)。
コレって上原氏の視聴者への挑戦状の様な気もしますね。かの実相寺監督さえ手を触れなかった、番組の基本フォーマット崩しですからね。きわどさっていう点からすれば、かの「怪獣使いと少年」を遥かにしのぐ、上原氏の問題作かも(いやはや…)。折角出てきて、素直に正統派のエピソードを書けばいいものを、思いっきり毒を混入して行く辺り、さすが上原正三氏であります。最初の1クール目位にこのエピソードが来てたら、きっと凄かったでしょうね。
"おおしま"としては、今回のエピソード、「各論賛成、総論反対」って感じですね。政治家みたいだけど(いやはや…)。
でも、往年のウルトラライターって、みんなウルトラを「卒業」して行くんですよね。何故か皆が口にする、「俺はもう「ウルトラ」は書かん…」という言葉。この言葉に秘められた底知れない重さって何だろう?…今回のエピソードは、上原正三氏にとっての「毒ガス怪獣出現(注)」だったのかも知れないですね…本人の中で一度完結した作品をもう一度書く…金城氏はあえて直球でそれに応えたけれど、上原氏は変化球で驚かせて見せた。見事にそれぞれのカラーを象徴する回答に思えます。
何かとっても複雑な心境でございました…
1997.08.09
注:「帰ってきたウルトラマン」第11話(1971.06.11放送 脚本:金城哲夫 監督:鍛冶昇 特殊技術:高野宏一)。「ウルトラマン」「ウルトラセブン」のメインライターであった金城氏が第2期シリーズで脚本を手掛けた、ただ一本の作品。金城氏は当時既に円谷プロを退社し、郷里沖縄に帰っていたが、本作のメインライターであった上原正三氏に請われた末、本作を執筆したという。その時にも、やはりこの言葉が…