いやいや、久々の佐川特撮、堪能させて頂きました。例によって東映の「シャンゼリオン」は殆どバンクシーンでしかお目にかかれなかったし、「グリッドマン」で果敢にビデオ特撮に取り組んだその最終回答が、「シャンゼリオン」でのフィルム特撮(しかも本編はビデオだというのに!)だったりと、最近ちょっと寂しい雰囲気の佐川監督だっただけに、久々に古巣円谷での特撮、しかもウルトラという事で、監督の熱の入れようが画面のこちら側までビシバシ届いてました。
とにかく第一印象は「ホントに丁寧にカット割って撮ってるなぁ」って事ですね。メタモルガが柱を引き抜くシーンでも、「柱に手をかけるメタモルガ→地面から引き抜かれる柱の根元→柱を持ち上げるメタモルガ」って具合にちゃんとスローモーション撮影で量感たっぷりの柱のカットがインサートされるあたりは、さすがに特撮を知り抜いたカット割りと言えるでしょうね。今回、通常の特撮シーンより2〜3割方位カット数が多いんじゃないかな?特撮っていかにウソをそれらしく観せるか、ってトコが身上ですから、こういう細かい描写を丁寧に積み上げて説得力を増していくしかないんですね、面倒臭くても。今回の映像は他の監督にも随分影響力があったんじゃないでしょうか?噂によると、佐川監督、次回作の「ウルトラマンダイナ」でも監督ローテーション入りが予定されてるって話も聞きますし、ぜひ今後もこんな特撮映像を見せて欲しいですね。今回ちょっと気になったのは火薬の花火っぽさ位でした。
ストーリー的には、「メガレンジャー」に移っちゃった武上純希氏のエボリュウ編と自身のマグニア編をまとめて決着させた長谷川脚本、自分のストーリーに対する拘りが感じられてとっても嬉しかったですね。「ティガ」はライター諸氏がシリーズの中で蒔いたサブストーリーをちゃんと収穫してる様な処があって、この種のシリーズ作品としては珍しい流れですね。こういう拘りはなんかイイですね。
エピソードとしては、最後の最後でよろけてしまう長谷川脚本の弱点が、今回も出てる気がして、ちょっと残念な部分はあります。折角理詰めで構築してきたストーリーを最後にエボリュウの幻影を出してしまう事で、いきなり人情話にすり替えてしまうのは、ちょっと安易だったかも。きっとあのシーンでガックリきたファンは多かったゾ。でも、登場人物に対する脚本家の愛は、充分感じられましたよ。
シチュエーションとしては、結構オイシイ場面が多かっただけに、演出はもうちょっとネチッこく撮っても良かった気はします。映像的に凝ったカットが少し欲しかったかな?
メタモルガは、仲々いい出来ですね。でも映像観てるとナイトシーンのラストで着ぐるみ燃やしちゃってるみたいですから、残念ながら現存してないんでしょうけど。あんなシーンで燃やさなくてもごまかせるのにね(いやはや…)。スタイルは、胴から足にかけてちょっと寸胴気味なのが惜しいですね。もうちょっと胴を絞るか、腿を太くすると、ちょっとイイかも。顔は「ウルトラ」の猿系怪獣の中でも最高峰を誇るリアルさ。眉間から鼻にかけての皺の寄り方が仲々いい感じです。普通こういう怪獣だと、顔はマスクとして処理される事が多くて、目の部分は演技者の目が覗いてるって造形が多い中、今回は完全な着ぐるみとして処理されててちょっと異色ですね。