御茶ノ水というのは、何だか謎めいた街である。どこか垢抜けない癖に、妙な洒落っ気があったりする。小さなイタリアンレストランだの、薄暗い喫茶店だの、古本屋だの、画材屋だの、学校だの、楽器屋だの…そういったものが一緒くたにガラガラと詰め込まれている。まるで玩具箱にほうり込まれた積木の様だ。
JRの線路に沿って高台の上に並ぶ小さな店々も、そんな謎めいた街を象徴する景色のひとつ。駅を通る度横目には見ても、入った記憶はとんとない。カステラの切れ端がギシギシと並ぶ景色…でもその一切れ毎にちゃんと意匠が凝らされている。
この並びにはHという珈琲店もあって、薄暗い店の奥の窓から、ほのかに川向こうの緑が覗いて見える。高台からの眺めは素敵なのだろうか?通る度に店の奥に透けて見える景色が、実は結構気になっている。何時か入ってみようと思うのだが…今日も何だかし逃した。 |