事務室第13室


開田裕治展スペシャル(1997.08.11)

これが市民ミュージアム。立派な建物でした。

ロビーの一隅ではグッズや画集の販売もされてました。会場限定のグッズ、カネゴンソフビなどもあった様ですが、夕方の時点でカネゴンは既に売り切れてた模様(いやはや…)。

ミュージアム内でのホールで行われたシンポジウム。ちょっとテーマが難しそうで不安でしたが…

この体勢はちょっと話しづらかったかも知れないシンポジウム。左から池田憲章、金子修介、開田裕治の各氏。右端は各氏を紹介する市民ミュージアムの方。実際の進行は池田氏が仕切る事に…

かなり嬉しい収穫。店主持参のNewtonにして頂いた開田裕治画伯の直筆サイン。ちなみに左上の日時はリアルタイムの時刻表示だから気にしないでね(いやはや…)。

 川崎市民ミュージアムで開催されている開田裕治展「怪獣ミュージアム」を観てきました。

 おびただしい数の展示作はどれも入魂の仕上り。開田裕治氏の並々ならぬエネルギーを感じるには充分すぎる展示です。

 実際に原画を見て感じたのは、やはり原画だけが持つ画面のきらめきと迫力ですね。撮影され、印刷された作品が、その過程の中でどれほどの情報をそぎ落されているのか…実際に原画を見るとその差異に驚かされます。

 とにかく、印刷物で良く見ていたはずの作品が、全く違う迫力で迫ってくるのはかなり新鮮な感覚でした。既に画集をお持ちの方にもぜひ原画を見て欲しいですね。きっとイメージが変わると思います。

 作品は予想外に小さく、F6号位のスケッチブックサイズ(縦42cm横32cm位)の作品がかなりあってびっくりしました。その中にコンマ数ミリの精度で細部が描かれている訳です。これは気が遠くなりそうでした(いやはや…)。

 懐かしの「宇宙船」表紙イラストの展示もあり、一時期シリーズ化された写真とイラストの合成作品も展示されていましたが、何と大判のカラープリントの表面に、直にアクリル絵の具で描くという驚異的なテクニックで製作されてました。

 8月10日には同時に「怪獣シンポジウム」と題するパネルディスカッションも開催されました。テーマが難しそうで、どうなる事かと思いましたが、内容的には「ガメラ」の絵コンテを材料に、金子修介監督にガメラシリーズの演出方法や裏話を伺ったり、池田憲章氏の沸き上がる様な特撮トークで盛り上り、終わってみれば予定時間を約1時間も超過する始末(いやはや…)。色々面白いお話も伺えました。

 おまけ:ミーハーと言われようと、何と言われようと私はかまわない!(いやはや…)しっかり頂戴してしまった開田裕治画伯直筆サイン!ロビーでお見かけしたのでサインをお願いしたら、気さくに応じて下さって大感激。一度やってみたかったNewtonサインでございます。

 開口一番「お、Newtonだ」という事で、結構興味は持って頂けた様でした。やはりちょっと書きづらいとの事でしたが(いやはや…)。

シンポジウムから...

店主が面白いと思った話を抜粋。だから前後に脈絡はございません(いやはや…)。

金子監督:子供の頃東宝特撮に比べて「ダサい」イメージがあって、実は「ガメラ」はあんまり観てなかった。

池田氏:東宝の、あの爆発音は戦時中軍関係の映画に協力した関係で、特別に録音させてもらった実際の爆発音がライブラリーに沢山あり、それを元に加工している。かの庵野監督が「ふしぎの海のナディア」を東宝で製作したのも、東宝のこの効果音が使いたかったから。だからあの作品の爆発音は円谷特撮と同じ音源を使ってます。

池田氏:昔文芸座で特撮映画の特集があった時、1月位毎日文芸座に通って特撮映画のカット数を調べた事がある。一日3回の上映で、全体→特撮→特撮という具合に調べて行く。監督毎にカット割に特徴があり、特に本多監督はカット割りにリズムがあった。

池田氏:「ゴジラ」の川北監督も、かなり厳しい条件の中で「ゴジラ」を作り続けてきた。「ガメラ」もそうだが、日本では続編に前作以上の予算をかけるという意識が製作会社に殆どないのが実情だ。そんな状況の中で、しかも地上戦だけの「ゴジラ」をこれだけ撮り続けるというのは凄い事で、ある意味拷問に近い作業だ。円谷英二氏が「南海の大決闘」を実質有川貞昌氏に任せたのも、さしもの円谷氏もこれ以上ゴジラの格闘が撮れない状況だったから。

金子監督:1作目のガメラはアオリの画が多く、多少頭を大きくした方がいいだろうというのであのスタイルになった。でも今考えると少し大きかったかも。

金子監督:怪獣映画はアクション映画ではあるが、普通のアクション映画と異なるのはそれを見ている人間がいる事で面白味が増すという部分。だから南の島で人知れず怪獣が戦ってるのってツマらないでしょ?

金子監督:特撮映画には、これを使うと作品自体が崩れてしまうという「禁じ手」が沢山ある。だから「ガメラ」の時にはこの点にかなり注意した。(ちなみに…)「マスコミを主役にするな」「変なスパイを出すな」「総理大臣を出すな」「何でも知ってる様な科学者を出すな」「亀を連想させるものは徹底して排除する(いやはや…)」撮影所に持ち込まれたスタッフの亀グッズもすべて撤去した(いやはや…)

 役者の演技についても同様。「G2」の永島敏行氏は、実は「お笑い」が好きらしく、穂波(水野美紀)の部屋でのセリフ「やっぱりまずかったんじゃないですか。訳も分からん男が二人も部屋に上がり込んで…」は当初コミカルに演じてもらったら永島氏の演技が面白すぎ(いやはや…)、撮り直した。プラネタリウムで台から降りる穂波に手をかそうとして、無視されてしまう際の渡良瀬のリアクションでも同様の処置が(いやはや…)。

金子監督:「G1」は子供をメインのターゲットに考えたが、「G2」ではまず大人の観客を先に考えた。それゆえ子供を置き去りにしてしまった、という反省はある。

開田氏:今大ヒットしている「もののけ姫」だが、何故ヒットしているのかと考えると、ジブリが今迄一貫して自分達の作りたい映画を作ってきたせいではないか。そうやって地道に作り続ける事でまかれた油に、今爆発的に火がついているのだと思う。映画のイメージは、やはり映画でしか作っていけないのではないか?

金子監督&開田氏:「G2」は古典的な怪獣映画のフォルムを崩した処に面白味があるのではないか?従来の作品は主役は必ず最後までドラマを引っ張って行かなければならない処があったが、「G2」ではあえて穂波が途中で舞台を降り、以降怪獣の決戦にドラマが移行していく作りにしている。