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 GSD

復活!
「GSD総集編」



懐かしきパソコン通信時代

前回、「グリッドマン会議室占領作戦!」を復刻した際にどうにも気になっていたのが今回復刻した「GSD(ゴールデン・シャチホコ・ドラゴン)」です。パソコン通信ネットワーク「ニフティサーブ(Nifty-Serve)」特撮フォーラムにあったフリートーク会議室「喫茶アミーゴ」で常連さんたちと書き込みしている内に、盛り上がって自然発生的に生まれた物語で、他の常連さんの書き込みにあった「名古屋城の巨大合体ロボット化」と「青柳ういろうモチーフの7機の小型ロボットによる合体ロボ」という要素を取り込んでGSDは誕生しました。

ちょうどその頃出張でしばしば名古屋近辺を訪れては、名古屋の町並みや味噌カツをはじめとする特徴的な食文化に接していたこともあり、「名古屋+特撮+ロボット」の要素を融合してストーリーを紡いでいくことになりました。当時の常連さんたちをモデルにした登場人物達や、他の常連さんの書かれるストーリーとの融合等、物語がどう展開してゆくか分からないリレー小説のようなオンライン上での新しいスタイルの物語世界の構築に、ワクワクしながら書いていたのを思い出します。第一世代のオンラインストーリーということで、書く側の熱気もひとしおだった気がします。

本来は今回ご紹介する部分の間に他の方々の物語や反応、サイドストーリーが挟み込まれ、より厚みのある内容だったのですが、今となっては当時の常連の方々に掲載許可を頂くこともかなわず、とりあえず自分の執筆部分を抜き出しての復刻になりました。残念ながら完全復刻とはなりませんでしたが、当時のネット・コミュニケーションの熱気を少しでも感じていただければ幸いです。

◆ ◆ ◆


004/035 おおしま RE:中部人よ、今こそ立て!
( 1) 94/03/21 10:04 003へのコメント


時を同じくして、名古屋城の内部では、謎の工事が急ピッチで進められていた…これぞ、カクレンジャーに負けてはならじと、中部人が持てる科学技術の粋を結集し、総力をあげて建造した中部科学技術陣の凱歌、城型巨大ロボット「ゴールデン・シャチホコ・ドラゴン(以下GSD)」である。

この巨大ロボットは、関東と関西の狭間で、常に独自のアイデンティティーを保ち続ける中部文化を、日本全土に浸透させる先兵として計画され、10年の歳月と数兆円の巨費を投じた超大型プロジェクトとしてスタートした。開発には世界的なロボット工学の権威、キム博士が招かれ、1984年3月、かつてない超大型ロボットの建造は、テレビ塔の地下深く秘密裏に作られた指令部を中心に開始されたのである。(第22話「GSDはこうして生まれた」より)

GSDは更に、「アオヤギ」と呼ばれる7機の小型ロボットに分離可能である。これらの小型ロボットには、それぞれ中部を代表する白、黒、抹茶、小豆、コーヒー、ユズ、桜の7色のカラーリングが施され、なめるとそれぞれの味が楽しめるという特殊金属で外装がなされている。

詳しい能力、武装等については現在のところ不明であるが、その外観からして、素晴らしい能力を秘めている事に疑いの余地はないと思われる。

…GSD始動の時は近い…



006/035 おおしま GSD暁に出撃す(?)(64L)
( 1) 94/03/23 22:48 004へのコメント


朝、名古屋の街を朝焼けが赤く染め上げる…

名城公園
しかし、そこにあの名古屋城天守閣の姿はない。それに変わってたたずむ7つの影。これぞ、超AIを搭載した新型ロボット「アオヤギ」の雄姿である…

名古屋駅前、「大名古屋ビルヂング」屋上
森永ミルクキャラメルの地球型広告塔が朝日を受けて燦然と光り輝いている。だが、その内部には中部人達の基地が設けられているのである。まさに、この広告塔こそが、「中部文化普及協会名古屋駅前出張所」の世をしのぶ仮の姿であった…

基地内部
隊員達が慌ただしく行き交う。その中にサングラスをかけ、太陽灯に当っている一人の男。彼こそが、この驚くべきGSD計画の最高指令官であるサカボン教授その人であった。ひとしきり太陽灯に当っていた彼は、おもむろに脇の通信装置に手を伸ばす。

サカボン教授:
「こちら地球基地、こちら地球基地、統制官、統制官応答願います」

スクリーンに現われる中部文化普及協会統制官。テレビ塔地下本部からの映像である。

統制官:
「どうした地球基地?ロボットゼロワン〜ゼロセブンのテスト準備は完了したのか?」

サカボン教授:
「ロボットゼロワン〜ゼロセブン、これから合体テストを行います。…しかし統制官、あのロボット達には「アオヤギ」という素晴らしい愛称が…」

統制官:
「サカボン教授、我々は固有名詞を用いない。総て数字で呼び慣わしているはずではないか!?」(土屋嘉男氏と見間違うばかりの見事なフィンガーアクションである)

サカボン教授:
「一体何時から?…はっ、私とした事が…も、申し訳ございません。それではこれからテストを開始します!」

統制官:
「うむ、成功を祈る」

サカボン教授:
「アオヤギ、これよりGSDへの合体テストを開始する。全機急速上昇!!」

名城公園、たたずむアオヤギ達の瞳に光がともって行く。一斉に急速上昇する7機のアオヤギ!

サカボン教授:
「アオヤギ、合体キーワード、シロ クロ マッチャ アズキ コーヒー ユズ サクラ!!」

アオヤギ:
「了解!!」

変形し、GSDへの合体を開始するアオヤギ達。しかし、どうしたことか合体に失敗してしまう!次々に栄のビル街に落下するアオヤギ達!

サカボン教授:
「あ〜っ!!アオヤギがっ!!」

統制官:
「地球基地、どうした!?何が起こったのだ!?」

サカボン教授:
「アオヤギ…いや、ロボットゼロワン〜ゼロセブンが合体に失敗しました!…やはりテレビみたいにボスがいないとダメなのだろうか?…いや、合体キーワードが悪かったかも知れん…ポポポイノポイポイポイにすべきだったのだろうか?…」

ナレーション:
「何故か合体に失敗してしまったアオヤギ達!果してGSDは出撃できるのだろうか?…」

<おことわり>
この物語はフィクションであり登場する人物、地名等はすべて架空のものです。




011/035 おおしま GSDの超秘密(?)(89L)
( 1) 94/03/25 22:43


合体テストに失敗、新型ロボット「アオヤギ」は栄のビル街に墜落した…

ビル街のあちこちから黒煙が噴き上がり、アオヤギ達の墜落した付近はビルが瓦礫の山と化している。道路をサイレンを鳴らしながら、消防車の一団が慌ただしく行き交っている。アオヤギの墜落したビル。残っていた外壁を崩しながら、煙の中からアオヤギ達が姿を現す。全く無傷である。

アオヤギ・シロ:
「…一体どうしたと言うんだ、我々が合体に失敗するとは?」

アオヤギ・コーヒー:
「全くであります。自分の感覚では、合体のタイミングは完璧でありました。どうして失敗したのか見当が付きません。」

地球基地
思いもかけぬ合体失敗に、基地は重苦しい沈黙に包まれていた。
呆然と立ち尽くすサカボン教授。と、その沈黙を破る様に電話のベルが鳴る。
一人の女性隊員がその電話を取る。

隊員:
「(ハンカチで目頭を押さえつつ)はい…こちら中部文化普及協会名古屋駅前出張所でございますが…はい?…(いきなり大声で)はいっ!教授ッ!?」

サカボン教授:
「うるさいぞナミカワ君、私は今、深い悲しみに打ちひしがれておるのだぞ!」

隊員:
「キム博士からお電話です!」

サカボン教授:
「何ッ!?キム先生から?すぐこちらに回し給え!」

ナレーション:
「キム博士…GSDの設計者であり、世界的なロボット工学の権威である。その能力はかのドクトル・ガルチュアや、ゲオルク・ララーシュタインにも並び賞されている…」

サカボン教授:
「先生、御無沙汰しておりました。」

キム博士:
「…愛、じゃ…」

サカボン教授:
「…はあ?」

キム博士:
「アオヤギが合体に失敗したのは、パイロットに名古屋を愛する心が足りぬからじゃ…」

サカボン教授:
「名古屋を愛する心?…」

キム博士:
「そうじゃ。GSDは非常に精密な合体システムを装備しておる。それをうまく作動させるためには、7機総てのパイロットの心が名古屋に対する愛に満ち満ちていなければならぬのじゃ。…サカボン教授、パイロット達の「名古屋メーター」を見てみたまえ。」

サカボン教授、脇にずらりと並んだ7台のモニターを見る。画面にインジケーターが表示されているが、そのレベルは低く、非常に不安定である。

サカボン教授:
「こ、これは!?…名古屋度が…低い…」

キム博士:
「大方、トンカツにウスターソースでもかけて食ったのじゃろうて。…どうじゃ?図星じゃろう?」

サカボン教授:
「福利厚生係長、パイロット達の昨日の夕食は何だ!?」

厚生係長:
「ゲンをかついで…トンカツ、だったのですが…」

サカボン教授:
「まさか、味噌の替わりにソースを?」

厚生係長:
「はあ、たまにはソース味が良いという、パイロット達の強い要望がありまして…」

サカボン教授:
「何と…これが、これが失敗の原因…」

キム博士:
「左様。名古屋といえば味噌、味噌といえば名古屋。中部文化の基礎は味噌じゃ。強い名古屋パワーを発動させるためには、スパゲティにさえ味噌風味ソースをかける程の、味噌に対する強い愛着が不可欠なのじゃ。」

サカボン教授:
「解りましたキム博士。さすがは超弩級ロボットGSD、一筋縄ではまいりますまい。そうと解ったからには、次こそ必ずGSDへの合体を成し遂げて見せます!」

キム博士:
「ホッホッホ、教授にもどうやらGSDの超秘密が見えて来た様じゃの?」

サカボン教授:
「ありがとうございましたキム博士!」

受話器を置くサカボン教授。その顔には晴れ晴れとした表情が浮かんでいた。
このお礼にはきっと「味噌入り萩の月」を、キム博士にお送りしようと心に決めるサカボン教授であった。

<おことわり>
この物語はフィクションであり登場する人物、地名等はすべて架空のものです。




012/035 おおしま 大阪の牙・東京の罠(?)(52L)
( 1) 94/03/27 10:35 011へのコメント


キム博士の助言によってGSDの超秘密をつかんだサカボン教授は、その日からMAC隊長となり(?)パイロット達の名古屋度向上のため、特訓を開始した…

(回想シーン)
ジープと競争(?)し、滝に打たれ、先を尖らせた丸太を縄で吊って交互に揺らし、敏捷性を向上させる(?)凄まじい特訓の数々。もちろん食事は味噌煮込みうどんに「きしめん」の麺を入れ、味噌カツ、名古屋コーチンの手羽を乗せ、「ゆかりせんべい」と「天むす」でトッピングしたという「スーパーナゴヤランチ」である。おやつが「青柳ういろう」であったことは言うまでもない…

そして再びGSDへの合体を試みる時が来た。7機のアオヤギを前にしたサカボン教授。

サカボン教授:
「では諸君、始めるぞ!全機急速上昇!」

アオヤギ:
「了解!」

急速上昇する7機のアオヤギ。青空に白い噴射雲を引きながら上昇する。脇の名古屋メーターを見るサカボン教授。総てのインジケーターがピークを示している。

サカボン教授:
「いける!これならいけるっ!!アオヤギ、合体キーワード、ブレイブアーップ!ポポポイノポイポイポイ!!」

変形を開始するアオヤギ
アズキとマッチャが脚に、クロとコーヒーが胴体に、ユズとサクラが腕に変形する!
そして最後にシロが頭に変形、遂にGSDへの変形が完了する!その頭部に燦然と光り輝く金のシャチホコ!!

GSD:
「ゴールデン、シャチホコ、ドーラゴンッ!!」

名古屋上空、紺碧の青空に出現するGSDの雄姿!
地球基地、隊員達が固唾を飲んで見守っている。望遠鏡を覗いている一人の隊員。
側にいた名古屋生まれのアメリカ人隊員(?)、ボブがその隊員に声をかける。

ボブ:
「…We did it?」

隊員:
「(望遠鏡から目を離し、ボブを見る)…Yes, we did it!!」

その瞬間、基地中から歓声が沸き上がる!抱き合って喜ぶ隊員達。

ボブ:
「シッツカシ、ドウシテアタマニ、キンノシャチホコガ ツイテルンカナア?」

モニターにサカボン教授が映る。

サカボン教授:
「…それは…カッコイイからだあ〜ッ!!」

零下140度の冷凍地獄と化す地球基地…

ナレーション:
「遂にGSDは完成した。だが、アンドロー軍団の蜂起が伝えられる大阪と、不気味な沈黙を続ける東京、そして未だ大阪に到着出来ぬエドラの行方は?…GSDの前には巨大な暗雲が低くたれこめていた…がんばれGSD!」



013/035 おおしま おしらせ(?)
( 1) 94/03/29 07:03


あの感動をもう一度(?)

全世界の良い子達に中部文化普及協会が贈る珠(あらたま)の名編(?)

「THE GREATEST GSD!〜怪人明智氏の優雅な生活〜」ビデオ、LD発売(??)

  収録作品:第1話「GSD暁に出撃す(?)」
       第2話「GSDの超秘密(?)」
       第3話「大阪の牙・東京の罠(?)」


現存するオリジナル・ネガからデジタル・ネガテレシネ、最高の画質を実現(?)

更に今回は根強いβファンの為にβIsヴァージョンも製作!ハイバンドの高画質をお楽しみ頂けます。

尚、LDには封入特典として豪華20ページ解説書付き!

更に同封のアンケート葉書を返送して頂いた方の中から抽選で、サカボン教授サイン色紙、キム博士直筆のGSDブループリント、パンナコッタ・スペース・インタープリタ等の豪華商品をプレゼント!

【巻末映像特典】
幻の第22話(未放映エピソード)「GSDはこうして生まれた」を本邦初公開!
更に全話予告編完全収録(一部予告編音声の現存しない話数があります。また、第22話はネガが現存しないため、現存する保管用プリントからの収録となります。若干の退色、傷はご容赦下さい。)

LD/GSDLD-0010(CAV)  ビデオ/GSDVH-0010(VHS) GSDBE-0010(Beta)

お問い合わせはお近くの中部文化普及協会まで

…本気にしないでネ(?)…って誰がするかっ!!



029/035 おおしま GSD The Next Generation(?)(87L)
( 1) 94/03/30 21:25 028へのコメント


名古屋駅前にそびえる「大名古屋ビルヂング」、そしてその屋上に立つ森永ミルクキャラメルの地球型広告塔の中に、我らがサカボン教授率いる中部文化普及協会名古屋駅前出張所、通称「地球基地」はあった…

基地内
先程から基地内の電話がひっきりなしに鳴り響いている。その対応に追われる隊員達。

隊員A:
「はい、S-VHSヴァージョンもお時間を頂ければお出しできますが…」

隊員B:
「えっ?…VHD、ですか?………」

名古屋生まれのアメリカ人隊員ボブ:
「Oh!キミノ ニホンゴハ ワカリニクイ!」

その様子を見ているサカボン教授、側の女性隊員に訪ねる。

サカボン教授:
「ナミカワ君、一体この騒ぎは何だ?」

ナミカワ隊員:
「GSDのビデオの注文ですわ、教授。お蔭様で好評の様です。」

しかし、その声には応えず、隊員達の応対の様子を見るサカボン教授。

サカボン教授:
「…ちょっと出かけてくる…」

ナミカワ隊員:
「…あの、教授!…」

出口に消えるサカボン教授の姿…

名古屋駅前
ボンネットに金鯱のマスコットをきらめかせながら街を行く、黒塗りのトヨタセルシオ。サカボン教授の公用車である。
後部座席に座っているサカボン教授、腕組みをし、何か考え込んでいる様子。
公用車は東海道本線のガードをくぐり、名古屋駅の反対側、名古屋駅付近の貨物駅跡地、今は広い駐車場になっている広場に出る。

広場では何かイベントが行われている様である。
色とりどりのテントが張られ、無数の「のぼり」が立てられている。
と、テントの影にロボットの姿が見える。
ハッとするサカボン教授。
アオヤギである。

サカボン教授:
「君、停めてくれたまえ!」

運転手に車を停めさせる教授。
車から降り、人混みをかき分けながらイベント会場に入って行く。どうやらGSDビデオ発売記念イベントの様である。
会場の各所に設けられたマルチスクリーンにはGSDの映像が流され、パイロット達はサイン会を開き、アオヤギは子供達を手に乗せて遊ばせている。
その様子に立ち尽くすサカボン教授。

サカボン教授:
「こ、これは一体?…!」

つかつかと歩き出すサカボン教授、パイロット達のところへ行く。

サカボン教授:
「…君達は何をしているのだ!?」

パイロット:
「あ、サカボン教授。…なにって、GSDのビデオ発売イベントですよ。こんな事ならサインの練習しとくんだった。…あ、順番だよ、並んで並んで。」

子供達を遊ばせていたアオヤギ・コーヒーがサカボン教授を見おろす。

アオヤギ・コーヒー:
「教授、自分達は今や名古屋のアイドルであります。自分は今、最高に幸せな気分であります。」

サカボン教授:
「…(拳を握り締め)…バカモーンッ!!」

そのあまりの剣幕にはっとするアオヤギとパイロット達。

サカボン教授:
「こんな事を…こんな事をするために私はGSDを作った訳ではない!こんな姿をキム先生がご覧になられたら、何と言ってお嘆きになる事か!」

怒りに拳を震わせるサカボン教授。と、その時…

キム博士:
「…ワシを呼んだかの?サカボン教授。」

声のする方を見るサカボン教授。そこにはキム博士が女子高生達に取り巻かれて立っている。
驚きの表情でその光景を見つめるサカボン教授。

サカボン教授:
「キム先生…!?」

キム博士:
「いやあ、イベントがあると聞いての。ちょっと遊びに来てみたらこの有様じゃ。ワシもまだまだ捨てたもんではないのお!このお嬢ちゃん達はみ〜いんなワシのファンじゃ!!」

女子高生:
「キムはかせえ〜?この機械は?何につかうの?」

キム博士:
「おお、そうじゃった!この機械はの、パンナコッタ・スペース・インタプリタといっての…」

女子高生達に発明品の説明を始めるキム博士。御機嫌である。その傍らで、呆然と立ち尽くすサカボン教授。しかし、教授はこの平和そのものの光景の中に、何故かいい知れぬ胸騒ぎを感じていた…GSDへの魔の手は、確実に迫りつつあった…。



033/035 おおしま 恐るべき越後ロボの正体(?) (110L)
( 1) 94/04/02 11:13 031へのコメント


GSDビデオ発売イベント会場
キム博士の思いもかけぬボケに、呆然と立ち尽くすサカボン教授。
と、その時、サカボン教授の腕のコミュニケーターが鳴る。

サカボン教授:
「私だ…」

ナミカワ隊員(声):
「教授!庄内緑地に巨大なロボットが出現、現在特防隊が交戦中との連絡が入りました!ジェネラル・ヤマモトからGSDの出動要請が来ていますが?」

一同に緊張の空気が走る。

サカボン教授:
「了解だ(切る)。……巨大な…ロボット?…GSDの他にもその様なロボットが…(一同を見る)諸君!連絡は聞いたな!?…GSDで迎撃するっ!!」

一同:
「了解!!」

アオヤギに乗り込むパイロット達。イベント会場にアナウンスが流れる。

アナウンス:
「ご来場の皆様にお知らせいたします。毎度お騒がせ致しますが、ただ今よりGSDが発進いたします。どなた様も危険ですので、係員の誘導に従って白線の外側まで下がってお待ちください。」

場内の人々が一斉にアオヤギ達の側を離れて行く。
アオヤギ・シロがサカボン教授を見下ろす。

アオヤギ・シロ:
「サカボン教授、私達は…私達は間違っていました…」

サカボン教授:
「…もう気にするな。それより相手の狙いは恐らくGSDだ。充分注意するんだぞ!」

アオヤギ・シロ:
「はい!…よし、みんな行くぞっ!!」

アオヤギ:
「了解!!」

一斉に急速上昇するアオヤギ。青空に7つの噴射雲が伸びて行く。
たちまち見えなくなるアオヤギ達。それをまぶしげに見送るサカボン教授。
公用車に向って歩き出す教授。
と、退避線の外側で待っていたキム博士と女子高生達。

キム博士:
「サカボン教授、ワシも一緒に行こう。」

その言葉にハッとしてキム博士を見るサカボン教授。

サカボン教授:
「キム先生…」

キム博士:
「(教授を見てうなずく)アオヤギやGSDはワシの子供達じゃ…いやあ孫達かのう?(女子高生達を見る)…お嬢ちゃんがた、お名残り惜しいがここでお別れじゃ。これはお嬢ちゃんがたに差し上げよう。決して喫茶アミーゴの5匹のネコちゃん達の言葉を翻訳したりせん様にな…」

女子高生達にパンナコッタ・スペース・インタープリタを渡すキム博士。
それを神妙な面持で受け取る女子高生達。
サカボン教授とキム博士は公用車に乗り込む。

サカボン教授:
「君、基地へ戻ってくれ、大至急だ!」

運転手:
「解りました!!」

地球基地へ向う公用車。
一方、謎の巨大ロボを追ったアオヤギ達は、特防隊がロボットと交戦したという庄内緑地上空に到着していた。
あちこちから煙が立ち上っているが、ロボットの姿はない。
着陸するアオヤギ達。降りるパイロット達。
戦車や武装ヘリは跡形もなくなっているが、どうしたことか特防隊には一人の犠牲者もない。
みな気絶している。

シロ・パイロット:
「…これは一体?…戦車やヘリだけがやられている…」

アオヤギ・シロ:
「キャプテン、私のセンサーには、この付近の電荷が異常に上昇している事が感じられます。これは、ある種の電子ビーム兵器を使用した為ではないかと考えられますが?」

シロ・パイロット:
「ビーム兵器か…」

と、近くで辺りを調べていたアオヤギ・ユズが叫ぶ。

アオヤギ・ユズ:
「キャプテン、こっちにジェネラル・ヤマモトがっ!!」

駆け寄るパイロット達。
そこには特防隊指揮官、ジェネラル・ヤマモトが気絶している。
しかし、どうした訳かジェネラルの顔は、仕事を休んでスキーに行った時の様に、ゴーグルをしていた部分だけ残してひどく日焼けしていた…

シロ・パイロット:
「ジェネラル、しっかりして下さい!…うん?日焼けだ…全体がひどく焼けている…スキーに行ってたんだろうか?」

すると、うわごとをいうジェネラル。

ジェネラル:
「…太陽が…降りて来た…そして…唄を…唄った…」

マッチャ・パイロット:
「太陽が?…何の事でしょう?スキー場の夢でも見てるんでしょうか?」

シロ・パイロット:
「その線も否定はできないが…この場合、強出力のビーム兵器を指しているのかも知れない。」

と、その時アオヤギ・シロが叫ぶ!

アオヤギ・シロ:
「キャプテン!地球基地より通信!ロボットが名古屋市内に出現したとの事です!!」

シロ・パイロット:
「何っ!?しまった、これは我々を名古屋市内から誘い出す陽動作戦だったのか!みんな、すぐに市内に戻るぞ!!」

急速発進するアオヤギ達…

ナレーション:
「遂に謎のロボットは名古屋市内に侵入した。GSDは果して間に合うのか!?そして緑地に置き去りにされてしまったジェネラルの運命は!?名古屋に危機が迫る…」

<おことわり>
この物語はフィクションであり、登場する人物、地名、団体名、理論等はすべて架空のものです。



034/035 おおしま 切り札はトクサツX(前編)(102L)
( 1) 94/04/03 13:53 033へのコメント


遂に越後の合体巨大ロボット「キリングジョー」は名古屋市内に侵入、名古屋の街は大混乱に陥っていた…

悠々とその巨体を日に輝かせながら、名古屋の街を飛ぶキリングジョー。
その強大な飛行用エンジンがビルの窓ガラスを震わせる。
道路に展開した特防隊の戦車部隊がキリングジョーに砲撃を開始する!
しかし、その攻撃をものともしないキリングジョー。

地球基地
サカボン教授、キム博士が隊員達と共にモニターのキリングジョーに見入っている。と、一人の隊員が観ていた携帯テレビのニュース音声が聴こえてくる…

アナウンサー:
「…避難する人々や車が駅や道路に殺到し、ここ名古屋は大混乱に陥っています…我々はこのまま、謎のロボットの(ピー)となってしまうのでしょうか?…」

テレビには妙に変色した避難の映像が流れる。
その放送を観ていた隊員。

隊員A:
「そんな事があってたまるか!名古屋にはGSDがいるんだ!」

隊員B:
「そうさ、GSDが来てくれればあんなロボット、一撃でやっつけてくれるさ!!」

隊員達:
「そうだ、そうだ!!」

盛り上がる隊員達。その様子を見るサカボン教授。ナミカワ隊員に尋ねる。

サカボン教授:
「アオヤギ達の現在位置は?」

ナミカワ隊員:
「あと1分で戦闘空域に入りますが。」

サカボン教授:
「よし、現在地点で合体を行う!…(マイクを持つ)…アオヤギ、合体キーワード、ブレイブアーップ!ポポポイノポイポイポイ!!」

アオヤギ:
「了解!!」

変形し、GSDに合体するアオヤギ達。
名古屋の空にGSDの巨大な姿が出現する!!
春の日差しを受け、金の鯱がきらめく!!

GSD:
「ゴールデン、シャチホコ、ドーラゴンッ!!」

飛行用エンジンがうなりをあげ、全速力で戦闘空域に向うGSD!
…その頃キリングジョーは砲撃をけ散らしながら、一直線に名古屋駅前に向っていた!
地球基地内部。

キム博士:
「…あのロボットの狙いはGSDと、この地球基地の抹殺じゃ…見てみなさい、一直線にこちらに向っておる…」

基地のディスプレイには、名古屋市内の地図とキリングジョーの進行状況が表示されている。一本の直線が名古屋駅前を目指して伸びている。名古屋駅前。遂にキリングジョーがその巨体を上空に現す。上空で静止するキリングジョー。不気味な沈黙が訪れる。

サカボン教授:
「待っているのか?…GSDを…」

と、突然轟音が基地に響く。

ナミカワ隊員:
「…!GSDですっ!!」

まっすぐな大通りを全速力で、名古屋駅前目指して超低空飛行して来るGSD!
その衝撃波で両側のビルの窓ガラスがことごとく吹き飛ぶ!!
駅前で思いきりエンジンを逆噴射し、急速停止する。
その噴射で、駅前の道路に駐車してあった自動車がおもちゃの様に吹き飛ぶ。
遂に相対する2体の巨大ロボット!!
キリングジョーの両肩の装甲がゆっくりと開き始める。
一方GSDの左腕には電磁シールドが形成され始める…

キリングジョー:
「待っていたぞGSD!今日からここ名古屋は、我々宇琉帝国の文化圏となるのだ!!」

GSD:
「そんな事を…無益な争いをして何になる!」

キリングジョー:
「問答無用!!食らえっ!!」

両肩のビーム発生システムがうなりをあげ、目もくらむばかりの光がGSDを襲う!!
GSDは左腕の電磁シールドを開き、キリングジョーの電子ビームを受け止めるが、その余りの出力に吹き飛ばされる!!
ビルに衝突するGSD!

GSD:
「うわ〜っ!!」

必死にシールドで電子ビームを受け止めるGSD、しかし、その周囲ではビームの当ったビル屋上の鉄塔が消滅し、道路の自動車が消え、ビルは鉄骨を失って倒壊する。

地球基地。その光景を驚きの表情でみつめる一同。

サカボン教授:
「あの光線は!?」

キム博士:
「…恐るべき奴…奴の電子ビーム兵器は、金属の分子結合を破壊する様じゃ。GSDとて、あのビームを長時間浴びるのは危険じゃ!!」

サカボン教授:
「GSD、上昇だ!体勢を立て直せ!!」

GSD:
「…りょ、了解!!」

急速上昇するGSD。上昇しながら右腕のアーム・ブラスターを連射する。
背後のステーション・ホテルの高層ビルもろともキリングジョーに次々にパルスビームが命中!もうもうたる煙が噴き上がりステーションホテルの上部が倒壊する!
と、その煙の中から飛び出して来るミサイル!不意を突かれたGSDはその爆発をまともに食らい、バランスを失ってビルに落下する!

GSD:
「うわーっ!!」

煙の中からキリングジョーが姿を現す。

キリングジョー:
「GSDよ、これ以上戦闘を続ければ、名古屋は廃墟と化すぞ。我々とてそうなる事は本意ではない。おとなしく降参するのだ!!」



035/035 おおしま 切り札はトクサツX(後編)(114L)
( 1) 94/04/03 13:55 034へのコメント:


地球基地
苦戦するGSDに緊迫する基地内の空気。

ナミカワ隊員:
「…GSD!…教授!何か方法はないんですか!?このままでは…このままではGSDがっ!!」

何事か考え込むサカボン教授。

ナミカワ隊員:
「教授!!」

考え込んでいた教授、ナミカワ隊員の悲痛な叫びに何事かを決する。

サカボン教授:
「…GSD、SHR波(※昭和ヒーロー列伝光線)の使用を許可する!直ちに発射体勢に入れ!」

キム博士:
「サカボン教授!気持ちは解るが、SHR波はまだテストも済んでおらん未知の武器じゃ、ここは実績の高いTNGビーム(※Star Trek: The Next Generationビーム)の方が賢明じゃと思うが…」

サカボン教授:
「キム先生、私には確信があります。これを御覧下さい。」

モニターでキリングジョーの各部をアップにする。

サカボン教授:
「あのロボット、色が変えられているために良く解りませんでしたが、各部に古今日本特撮ロボット達と共通の部分を見いだすことができます。」

モニターに映るキリングジョーの全身。その周りにモデルとなったロボット達のスチール写真が出る。それを驚きの表情で見つめるキム博士。

キム博士:
「これは…という事は…あれを作ったのは…特撮ファンじゃな!?」

サカボン教授:
「その通りですキム先生。ならば操縦者もきっと…」

ナミカワ隊員:
「特撮ファン!…ですね、教授。」

サカボン教授:
「その通りだナミカワ君。…奴にはSHR波をおいて他にはない!」

キム博士:
「サカボン教授、素晴らしい推理じゃ!よかろう。やってみたまえ!」

サカボン教授:
「ありがとうございます!!…GSD、もう一度繰り返す、直ちにSHR波発射体勢に入れ!」

地上に落下したGSD、じりじりとキリングジョーに追い詰められる。と、サカボン教授の指令が届く。

GSD:
「…解りました教授、直ちにSHR波発射体勢に入ります!」

GSDの身体の各部で何かロックが外れる。GSDの背後に巨大な電波放出装置が孔雀の羽の様に拡がる。

キリングジョー:
「何っ!?」

サカボン教授:
「GSD、SHR波発射!!」

GSD:
「了解!!!」

GSDの電波放出装置から凄まじい閃光と共に、SHR波がキリングジョーめがけて発射される!
それをまともに食らうキリングジョー!!

キリングジョー:
「うわ〜っ!!こ、これは何だ!!」

キリングジョーの身体のあちこちがスパークする!キリングジョーのコクピット。
総てのモニターに70年代特撮ヒーローが乱舞する!

パイロット:
「こ、これは!?…す、素晴らしい…こんなに様々なヒーローを一度に堪能できるなんて!!…ああっ!ゲバー署長が大岩の大ちゃんだったとは…」

キリングジョーの動きが止まる。しばらく沈黙の時が流れる。
息を飲む地球基地の一同。
GSDはファイティングポーズを崩さず、キリングジョーに一歩踏み出す。
が、しかし…

キリングジョー:
「待て、GSD!…よそう…特撮に名古屋も越後もない…私達は、何か大きな過ちを犯していたのかも知れない…」

GSD:
「キリングジョー…」

しばしの沈黙。何事か考えているキリングジョー。顔をあげ、GSDを見る。

キリングジョー:
「名古屋はお前に預けておくぞGSD!…さらばだ!!」

飛行用エンジンを全開し、徐々に上昇を始めるキリングジョー。
加速し、遂に青空の中に消えて行く。それを見送るGSD。

GSD:
「キリングジョー…」

地球基地
その不思議な光景を呆然と見つめる一同。

サカボン教授:
「…特撮に名古屋も越後もない…か…」

キム博士:
「教授、何でレッドバロンがあってマッハバロンがないんじゃ!ララー様がお怒りじゃぞ!!…おおっ!サンダーマスクはもういっぺん観たいんじゃ!!…あっ、ロビンちゃんの島田歌穂、今はどうしておるんじゃ!?」

サカボン教授:
「…あの、その…キム先生…」

数日後。名古屋の街では復興作業が開始され、街は活気を取戻し始めていた。
GSDは元の名古屋城の姿に戻り、名城公園にその金の鯱をきらめかせながらそびえ立っていた。
春のうららかな日差しが公園の桜の花にまぶしい。その満開の桜の下を行くサカボン教授とキム博士。

サカボン教授:
「キム先生、本当にありがとうございました。お蔭様でGSDは名古屋を救えました。」

キム博士:
「これで…良かったのかも知れぬな。特撮を愛する者に国境なぞないという事じゃ。」

サカボン教授:
「本当に…」

4月のそよ風が心地よい、ある晴れた日の昼下がりであった…



GSD The Next Generation 〜 完 〜




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